横山やすし元マネ・大谷由里子さんが語る「やっさんは人に逢う天才!何時でも前向き!」
「ワシは我儘や。そやけど、人がワシの我儘聞いてくれる間は、ワシもまだ売れてるのかなぁと思ってんねん」 私のマネジャー時代、横山さんが漏らしたホンネが芸人の本質を物語っていると思います。 芸人は「スーパー水商売」の世界。今日ある仕事が明日もあるとは限りません。みんな多かれ少なかれ不安を抱えています。だから、ポジティブでなければ生きていけない。不安の裏返しです。月亭八方さんも、よう言うてました。「おまえな、安心を求めるから、不安になんのや。安心なんて、ハナからないと思えば不安も無いやろ」と。その通りと思います。
私も「やっさんのマネジャーは大変だったでしょう」とよく言われます。そんな時に思い出すのは、よしもと流の教えです。「大変って“大きく変わる”って書くやろ。おまえはそんだけのチャンスを貰ってんねん」と、とことんプラス思考の社風です。つまり「苦労=不幸」じゃないということです。人間って面白いほど、今が幸せだったら、過去の苦労がネタになる。離婚で、しんどい思いをしても、若い子と再婚したら「あの時、別れてよかったわ」となります(笑い)。
幸せを引き寄せるには、まず笑顔でいる、明るく挨拶する、他人を褒める。これは基本だけど、つい忘れがち。笑顔でいれば、相手が大事にしてくれるのは、心理学的にも立証されています。笑顔って相乗効果で、自然と周囲も明るくなる。そんな「ごきげん」な場づくりがとても大切です。逆に不機嫌な人には、誰も近づきたくない。横山さんも最終的には、人が寄りつきにくくなってしまった。私が担当したのは、ちょうど相方の西川きよしさんが参院選に初出馬した時期です。もう荒れて荒れて、番組も酩酊状態でやってきました。
横山さんは天才的な甘え上手で、すごく疑り深い人でした。散々尽くしてくれる女性にも、ちょっと電話が通じないと、すぐ「他に男ができた」と疑ってかかる。雑誌連載の男性担当者と、横山さんの彼女を伴って食事した時などは大変です。男性担当者が彼女のお皿に料理を取り分けただけで、男性担当者の奥さんに「おまえのダンナ、ウチの女とデキてるんちゃうか?」と電話を入れてしまう。そんな話が山ほどあります。
横山さんのような「笑いの天才」なら、周囲が放っておかず機嫌を取ってくれる人も現れますが、私ら凡人はそうはいきません。ごきげんで生きていくには、人に感謝しないと。西川さんが誰からも好かれるのは、いつも「ありがとう」と言い続けたからです。
ずっと売れ続ける芸人と、そうでない芸人の差って何だと思いますか?
☝ マネージャーのおおたに・ゆりこ氏
いろんな芸人を見てきましたけど、停滞してしまう芸人は同じ人間としか付き合わない。売れている人は面倒くさがらず、興味ある分野の人たちに会いに行きますね。 違う世界から多くのネタをインプットし、次なるステージを見つけてくる。仕事が減っても「忙しかった時にできなかったことをしよう」と思える人ほど売れていきます。何事も「学び」をやめない姿勢が大切なのだと思います。今は「激動」というけれど、冷静に考えれば世の中が変化しなかった時代なんてないですから。肝心なのは、どんな時代でも生きていける自分づくり。人間の幅を積極的に広げていかないと。そのためには「居心地の悪い場所」でも行ってみる気持ちが大切です。自分は浮くんちゃうかなと思っても、いざ行ってみれば意外と浮いたモン同士で盛り上がることだってあります(笑い)。
とにかく、今の職場にしか居場所がないなんて思わないことです。大事にしたいのは好奇心ですね。あんな生き方、こんな考え方もあるんだって知れば知るほど、必ず「人間力」は磨かれていきます。
▽おおたに・ゆりこprofile
研修会社「志縁塾」代表取締役。1963年、奈良県生まれ。京都ノートルダム女子大卒業後、吉本興業入社。故・横山やすし氏のマネジャーを務め、宮川大助・花子らを売り出す。88年、結婚のため退社。91年、企画会社を設立。98年に吉本興業とジョイントし、社会人向け人材育成学校「よしもとリーダーズカレッジ」を立ち上げ、「笑い」を用いた育成法で注目を集める。
引用・参考元 nikkan-gendai. < >
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