相次ぐ死刑判決破棄…市民感覚反映されぬ裁判員裁判の問題点

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相次ぐ死刑判決破棄…市民感覚反映されぬ裁判員裁判の問題点

 

大阪高裁は9日、2012年に起きた大阪ミナミ通り魔事件の控訴審判決で「計画性が低い」などと1審の死刑判決を破棄。10日には、14年の神戸小1女児殺害事件の控訴審判決で「計画性がない」などと1審の死刑判決を破棄し、いずれも無期懲役に減刑した。

 

被害者側は「裁判員裁判の否定」などと憤っているが、そりゃそうだ。「市民の感覚や常識を裁判に反映させる」筈の裁判員裁判の判決が、裁判官だけの審理であっさり覆されたら、納得がいかないのも分かる。裁判員だってそうだろう。

 

「裁判員の心理的負担は相当です。遺体の写真を見た裁判員の女性がPTSDを発症したり、男性が審理中に意識を失ったケースもある。極刑に慎重になるのは当然としても、被告と対面し、怖い思いをして量刑を決めたのに、『1人殺害の強盗殺人事件で死刑の例はない』などと破棄されたら、裁判員にすれば『やってられない』というものだろう。

 

■制度設計には大きな問題点■

 

著書に「黒い巨塔 最高裁判所」(講談社)などがある、元裁判官で明大法科大学院教授の瀬木比呂志氏はこう言う。

 

「『市民の司法参加』とうたわれた裁判員制度ですが、導入について、当初、刑事系裁判官は反対していました。日本の裁判所は官僚組織ですから、一般市民の参加は面白くない。しかし、裁判官は長らく民事系が優位で、刑事系は劣勢でした。そこで、刑事系トップが、その基盤を強化し、人事権を一時的にでも掌握するため、また、刑事系の権益確保のために、賛成に回ったといわれています」

■そんな経緯だから、制度設計には大きな問題点がいくつもある■

 

「裁判員裁判の対象となるのは、実際には、被告が認めている事件が多く、本気で無罪を争う事件は少ない。事実上、裁判員は有罪か無罪かではなく、量刑を決める場合が多い仕組みになっています。初めての判断ですから当然重くなりがちなので、高裁は『重すぎる』と破棄することになる。米国の陪審制では、陪審員は有罪か無罪か判断し、量刑は裁判官が専門的調査員らの意見を聞いて決めることになっています。また、遺体等の残酷な写真は、『予断を与える』という理由で、陪審員には見せないのが原則です」(瀬木教授)

 

制度を導入した09年の裁判員辞退率は53・1%だったが、16年8月末には64・3%まで増えた。不完全な制度に徒に振り回されるのは、勘弁してもらいたい。これが市民感覚だろう。いろいろと問題が出てきている。

 

 

 

記事・画像 引用・参考元 日刊ゲンダイ

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