今夏~秋は餌不足でクマ出没が増える? 長野県が警戒情報を発動
今年は各地でクマ(ツキノワグマ)の出没や人的被害が相次いでいる中、長野県は「この夏~秋は特にクマの人里への出没や農作物被害に注意を」と警戒情報を発動しました。春先から気温が高かったため山の果実などの生育が早く、なくなるのも早まってクマの餌不足が発生。里や畑などへの出没が増える恐れが出てきたとの判断です。長野市などでは実際にクマの出没が増えている地域もあり、登山や山仕事などのクマよけ対策が市民の間で真剣に検討されています。
長野県林務部が出した「夏季のツキノワグマ出没注意について」の情報によると、通常でも6月から7月にかけてクマは交尾期にあたり、活動が活発化。また、この時期は親から独立したばかりのクマの単独行動が増えます。
加えて今年は春からの高い気温で山菜類やサクラ類、キイチゴなどの果実の生育が早く、終わりの時期も早まり餌不足になっていると想定。餌不足の期間が長くなるため出没のおそれが大きくなると見ています。
クマの被害を防ぐ対策として同県は、朝と夕はクマの活動が活発になるので、散歩などで森や林の周辺部に近寄らないよう呼び掛けています。
また、▽通学路、森や林の周辺部の道路わきのやぶの刈り払いをする、▽トウモロコシや早生の果樹など食害されやすい農作物は電気柵で守る、▽クマを誘いやすい生ごみや収穫した農作物の残り物、ごみは地中に埋めるなど適切に処分する――などの対策を求めています。
【4年ごとに「超大量出没」繰り返す?】
林務部によると、最近は「クマの大量出没は2年に1度繰り返される傾向にあり、今年はその大量出没の可能性がある」。ただし、山のドングリなどの餌の実り具合に左右されることもあるので、慎重な判断が必要だとしています。
その一方で、特に目立つ大量出没は4年ごとに繰り返される傾向も。長野県内の大量出没年の目撃数と人身被害(4~12月)は、2006(平成18)年の目撃数4500件余、人身被害16件、18人、2010年は同2500件余、同14件、14人、2014年は同2800件余、同31件、32人で、他の年の目撃数が1000~1600件、人身被害もほぼ一けた台なのに比べ極端に大きな動きを示しています。
長野県内の月別の出没傾向は、通常年の場合は山の餌がなくなり農作物が収穫期を迎える8月が目撃のピーク。しかし2006、2010、2014年の大量出没年の平均を取ると、8月から通常年以上に出没数が増え始めて9月になってピークを迎え、9月だけで各年9月平均の倍近い900件弱もの出没を目撃しています。出没数と長引く期間で、農家や市民の警戒態勢の強化と警戒期間の長期化が迫られます。
長野市内では市街地に近い地附山公園にも「クマ出没注意!」の看板が立ち、山手の飯綱高原でも目撃情報が相次いでいます。また数年前には、旭山から、犀川沿いにクマが移動!な・なんと、新幹線長野駅のプラットホームに出没したことさえある。
山に入るときは、クマに人の存在を知らせるために音(リックサックに鈴をつける!ラジオを付けるなど)を出しながら歩くなどの対策が欠かせなくなっています。また山の各所に、クマよけの鐘を設置している。それを鳴らし、人の存在を知らせている。
■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説
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