【信州シリーズ】 信州方言 考
信州は、標準語をしゃべり、方言というものはないと、少なくても、信州を離れるまではそう思っていた。ところが故郷を離れて、42年経って、故郷に戻ってきたら、やたらに方言というものが気になって、恐れいりや(入谷)の鬼子母神という事に相成った。
改めて、列挙すると、【しょうしい】→恥ずかしい。【もうらしい】→可哀想。【ごむせえ】→汚らしい。【わにる】→人見知りする。【えぼつる】→拗ねる。【おひゃらかす】→揶揄う。【おしょくる】→へし折る。【があたく】→散らかっている。【かずける】→~のせいにする。【かまける】→愚痴を言う。【かんじる】→寒い。【かんます】→掻き混ぜる。【きなし】→無意識に。【げえもねえ】→甲斐がない。【ごすたがわく】→腹が立つ。【ごしたい】→疲れた。【こすっからい】→ずるい。【こてえる】→打撃を受ける。【こわい】→硬い。【おっかない】→恐い。【このけんまく】→こんなにも沢山。【べしゃる(又はべちゃる)】→捨てる。【とぶ】→走る。【ぼこ】→赤ん坊。【まくらう】→大食いする。【まていに】→丁寧に。【みぐさい】→格好悪い。【ちょんこづく】→調子づく。などなど。
【その他に、用例を出して説明する方が解りやすい例として】
○ せう→言う。例 そんなみぐせえ事せうな!
○ ~かや?→~かな? 例 そんな事せってんかや?[そんな事言ってるんかなあ!?]
○ けんまく→あんなに沢山 例 あのけんまく「わにる」なんて普通じゃねえよ!
○ げえ(い)もねえ→やっても意味がない。例 そんな事やってげえもねえなあ!
○ まていに→丁寧に。例 そんなみぐせえ事してね(無)で、もっとまていにやらねかい!?
○ やだくて!やだー。例 「(そんなことせって)やだくてえ!」←おひゃらかされた時などに女の子がよくこ’ういう受け答えをすることが多い。
○ があた(又はがわた)→外見。例 そんな側た(がわた)ばかり見てちゃだめだに!~だに と語尾に付けるのは、中信から南信にかけてよく使われる。
○ こてえる→堪える。例 「そんなことせわれちゃこてえるなあ!」
○ があたくは散らかっている様を「せう」が、がたく坊主とは、関西で言う所謂「やんちゃ」と同じ意味である。
○ ~ず!→レッツゴーの意味がある! 例 そろそろ行かず! そろそろ行こうか!ちょっと聞くと「(私は)行かないとせっている様に聞こえるが、全く逆で、行こう!という意味である。それでは行かないという時は、「~しず」とせうのだ! こっちも聞きようによっては「やろう」というように聞こえなくもない。ややこしい。
【その他 ご参考に!】
○ とぶ→走る。信州出身の先生が、都会の学校に赴任して、体育の時間に、生徒に向かって、「よーし!とんでみろ!」と言ったら、だれ1人走り出す生徒はいなくて、みんなその場で「ぴょんぴょん跳ねていた」という笑い話がある! 因みに昔の信州の運動会のプログラムには「とびっくら」というのがあったが、これは「駆け比べ」という事で、所謂「徒競走」のことですな!
○ ずく→億劫がらずにまていにやろうとすること。「そんなこすい事考えてね(無)でずくだせや!」などと使う。逆に炬燵に入りっぱなしで、何もせずモタモタしてると、「このずくなし!」とおっかない程怒られてしまう。[信州の冬は早く来るので、折角の産物を実らせても、モタモタしていると雪が降って収穫を台無しにしてしまう!したがってスケジュール通りに物事を済まそうとするから必然的にせっかちになる!炬燵などに入ってぐずぐずしていると、直ぐこの「ずくなし!」という罵声<!?>が飛んでくる!]
まあちょっと考え付いただけでも、こんなになってしまった。長野県は、南北に220km、東西は北アルプス、南アルプスに遮られており、中央アルプスは、木曽谷と、伊那谷を隔てている。また北・東・中・南信とそれぞれを渡るときは、峠を越えなければならなかったため、同じ信州でも、方言も全然違う。小生は北信だが、南信などの言葉や、抑揚は全然違い、面食らった程だ。したがって今回の方言について書くまで、知らなかった方言も多い。いまはTVなどで、所謂標準語が日常語られ、耳に入ってくるので、流石に方言を聞くことはなくなっているが、行政の都合で、昔からの町名が画一的な呼び名となるのと同じで寂しいことだ!時代の流れと言えばそれまでだが!
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