「上島珈琲店」は普通のカフェと何が違うのか! 慌てず焦らず商品をじっくりと育成する姿勢が一貫している。

経済・社会

「上島珈琲店」は普通のカフェと何が違うのか! 慌てず焦らず商品をじっくりと育成する姿勢が一貫している。

 

ブルーボトルコーヒーの上陸に始まるシングルオリジンブームを経て、「コーヒービーン&ティーリーフ」の日本上陸、スターバックスの紅茶ブランド「STARBUCKS TEAVANA」のオープンなど、多様化が進むカフェチェーン。一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会の統計・動向調査を見ても、喫茶店を含むコーヒーショップは、ここ数年で売り上げ・店舗数ともに微増のラインをたどっている。コンビニコーヒー、海外チェーン参入など話題も豊富で、全体として活況と言うことができるだろう。

 

ここに、国内チェーンで名前はよく知られているにもかかわらず、今ひとつわかりにくい、ミステリアスな存在がある。東京都内の一等地や有名施設内に展開している「上島珈琲店」である。

 

同社のホームページを見ると、「どら焼き&大福」「抹茶生姜ミルク」「はちみつミルク珈琲」などなど、何やら“攻め”の品ぞろえ。現在は売られていないが、夏季限定商品である「宇治抹茶かき氷」も話題のアイテムだった。

 

スタバの甘めのデザート飲料「フラペチーノ」が人気化したこともあり、最近人気のカフェチェーンで特徴的なのが、スイーツやコーヒー以外のドリンクに力を入れている点。上島珈琲店ではどのようなスイーツ、ドリンク戦略を立てているのだろうか。

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■上島珈琲店のほか「珈琲館」も

 

【基礎部分から確認しておこう】

 

上島珈琲店はUCCホールディングスの擁するコーヒーチェーンのひとつ。UCCホールディングスは独自の農園を有し、原料を苗木から育てるほか、コーヒーなどの業務用サービス事業や外食事業、コーヒーマシン事業など、“カップから農園まで”、コーヒーに関わる事業を包括するグループ会社である。2012年には大手ユナイテッドコーヒー(現UCCヨーロッパ)を買収し、グローバル化も進めている。外食事業では、レジで注文して商品を受け取るセルフサービスの上島珈琲店のほか、席で注文を取るフルサービスの「珈琲館」なども持っている。

 

グループ内で外食事業を担うユーシーシーフードサービスシステムは、上島珈琲店約110店舗、珈琲館約300店舗など、約650店の喫茶店業態を展開する。店舗数としては、1000店を軽く超えるドトールコーヒー(星乃珈琲店などを含む)、スターバックスコーヒーが2強といえる。それに続くのがコメダ、続く4位をタリーズコーヒーと争っているのがUCCグループだ。地味ではあるが大手の一角なのだ。

 

【どのような歴史なのか】

 

「上島珈琲店は、個人経営の喫茶店が衰退する中、”古きよき喫茶店文化を継承しつつ、新しい価値をつくる”というコンセプトのもと、2003年にスタートしました」(UCCフードサービスシステムズ上島珈琲店営業部の橋本吉紀次長のはなし)

 

同店の特徴は、ネルドリップによる抽出。特許取得した独自のネルドリップマシンは、街の喫茶店のマスターが1杯ずつ丁寧に入れるコーヒーの味わいを目指したものだ。

 

ブランドとしてのターゲットは「拘りのあるアクティブシニア男性」。日本の喫茶文化を踏襲した和風モダンのインテリアを採用し、静かにジャズが流れる落ち着きのある空間を形成している。カップや椅子などには柳宗理氏のデザインが用いられている。

 

ただ、実際に利用しているのは30~40代の女性が多いそうだ。これは、商業施設50%、オフィス街30%、住宅・ターミナル20%という出店傾向にも関係があるのだろう。

 

品ぞろえは他チェーンに比べれば少ないものの、季節限定のスイーツやドリンクなどにも力を入れている。そして、その注力度合いには並々ならぬものがある。筆頭が、数量限定の「日本蜜蜂のはちみつミルク珈琲」(Mサイズ700円)だ。定番商品のミルク珈琲は、ダブルネルドリップで淹れたクリアで濃厚な味のコーヒーに、ミルクを加えたもの。これに季節の素材を添えた商品が季節商品の柱となっている。

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「日本蜜蜂のはちみつミルク珈琲」は毎年、秋から冬にかけて発売され、今年で7年目になる人気の商品だ。紀州和歌山で養蜂される日本蜜蜂のはちみつは、年に1度しか取れないうえ、量も少ないため非常に稀少。流通しているはちみつの1%程度で、ほとんど一般に出回らないそのはちみつを、養蜂農家と直接契約して買い上げ、季節限定商品に投入しているのだという。

 

「“百花蜜”と言って、さまざまな花から取れる蜜です。さらに、量が少ないので複数の養蜂家の蜜をブレンドします。そのブレンド具合も、コーヒーの味を引き立てる香りや味わいになるよう、当社の注文に合わせて貰っています」(商品企画部 丸田文氏)

 

■稀少で高級な素材を用いるため、原価が高い

 

「鹿の子バタどら」(280円)は、国産小麦を原料とした生地に、十勝産小豆の粒あん、鹿の子豆を挟んだもの。バターを加え洋風の香りを添えている点が上島珈琲ならではの工夫だ。なお、このバターも国産と、素材にこだわっている。

 

このように稀少で高級な素材を用いるため、原価がかなり高くつき、季節商品については「一般的な原価より10%ぐらい高いものもある」(橋本次長)という

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【キッチンでのひと手間とは?】

 

さらに、出来立てのおいしさを感じてもらうため、店内のキッチンでのひと手間に拘っている。たとえばバタどらは温めてバターを溶かしてから提供するそうだ。また宇治の老舗の抹茶を使った「抹茶生姜ミルク」も、注文を受けてから一つひとつ生姜をすりおろして提供している。

 

このように、“究極”と言っても過言ではないほどの季節商品への拘りなのだが、あくまで“コーヒーのおいしさを知ってもらうためのツール”という位置づけとしてやっているのだそうだ。

 

しかも中には、一見して首を傾げる商品もある。アイスコーヒーにソーダを加えた「冷珈ソーダ」(Mサイズ470円)だ。「賛否両論ある商品ですが、上島珈琲店の“チャレンジ”の姿勢を象徴する商品として販売し続けています。もちろん、おいしいという自信を持って開発しておりますし、お客様にも徐々に理解され、定着してきています」(丸田氏)

 

このように、発売後すぐに受け入れられない商品であっても、社の方針として販売を続けることは上島珈琲店ではよくあるという。即ち商品の育成に時間を惜しまないという事だろう。(そこまで我慢しきれなくて廃番にする例の方が多い)「社内では“育成商品”と表現しています。上島珈琲店のコンセプトを守るために意味のある商品であれば大事に育てていこう、という方針です」(丸田氏)

 

育成商品としてはほかに、フランスのレユニオン島で栽培された希少なバニラを使い、香りで甘みを出した「ブルボンヴァニラの無糖ミルク珈琲」(Mサイズ460円)などがある。

 

かくもユニークなこだわり商品の数々は、上島珈琲店の大きなアピールポイントとなりそうだ。しかし残念なことに、その拘りの一つひとつが、あまり広くは知られていない。「拘りが多すぎて、すべてを伝えきれていない」(丸田氏)というのが正直なところだ。

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■SNSでの情報発信も積極的に行う

 

そのため、ホームページに加えてSNSでの情報提供も積極的に行うようになったという。それらを通じて寄せられる声は「和菓子とコーヒー、意外と合う」「生チョコミルク珈琲を1週間前から待ってました」などと好意的なものが多いそうだ。確かに、あまり大々的に宣伝を行うよりも「知る人ぞ知る」程度にとどめるほうが、マニア心をくすぐるというメリットがある。

 

また、7店舗で数量限定販売されている1杯2500円の「ブルボンポワントゥ」については10月から12月末までCMで宣伝している。伝説のコーヒーをフランスとの共同で復活させたものとのことで、「コーヒーの文化を守る」というブランドの姿勢を伝える一方で、広告塔の役割も果たしていると言えるだろう。

 

全国展開の目標としては、スタート当初から変わらず250店舗を掲げている。店舗展開の推移を見ると、2011年の71店舗以降、5年間で114店舗まで増えたものの、現在のところまた110店舗まで減少している。拡大していく過程では、稀少な素材を使った商品の供給体制、また従業員教育とのバランスが難しい。独自の価値観をあまねく広げながら成長していくために、ブランド戦略も非常に重要になってくるだろう。

 

引用・参考元 ヤフーニュース < 東洋経済オンライン 圓岡 志麻>

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