買い物弱者地方だけの問題じゃない!全国1000万人が陥っている可能性 都心で急増“買い物弱者”対策の難しさ!
4月14日、総務省は2016(平成28)年10月1日時点の人口推計を1億2693万3000人(外国人を含む)と発表しました。この結果から、日本の総人口は2008(平成20)年をピークに約110万人減少したことになります。
人口減少は社会や経済など、さまざまな分野に影響を及ぼします。それらは、私たちの暮らしに直結することもあります。そのひとつが、買い物です。日々、私たちは食料品をはじめシャンプーやトイレットペーパーといった日用品などを近所のスーパーや商店で購入しています。近年、生鮮食料品や日用品類を購入する店が相次いで閉店しているのです。
そのため、これまで当たり前のように購入できた日用品や生鮮食品が、簡単には手に入らなくなりつつあります。こうした社会状況に行政も動き出しました。
■急増する買い物弱者 車がない若者や乳幼児の子育て世代も■
「地域に根差したスーパーや商店が撤退・閉店している要因には、少子高齢化や人口減少、ネット通販の隆盛、大規模小売店による競争激化、後継者不在など、さまざまです」と話すのは経済産業省商務情報政策局流通政策課の担当者です。
経産省では日用品の買い物に不便をきたす人たちを買い物弱者と位置づけていますが、買い物弱者が行政課題として認識されるようになったのは約10年前まで遡ります。経産省は2009(平成21)年度に調査を開始し、2010(平成22)年に報告書を作成したのです。
当時、経産省は全国の買い物弱者を約600万人と推計。ところが、ここ数年間で社会状況は目まぐるしく変化しました。最近の調査で買い物弱者は100万人も増えて、約700万人と推計されています。
「700万人という数字は、あくまでも65歳以上の高齢者で日々の買い物に困っている人です。地方在住でありながら自動車免許を保有していない若者や乳幼児を抱えているために買い物で遠くまで出かけることができないパパ・ママなども買い物弱者といえます。そうした人たちを含めると、全国に1000万人程度の人たちが買い物弱者となっている可能性があるのです」(同)。
■地価が高いため、小売店が出店できない。23区でも目立ち始めた買い物弱者■
これまで買い物弱者を多く抱えていたのは、過疎化が進んでいる地方都市と思われがちでした。そのため、買い物弱者対策は地方の問題として受け取られていました。しかし、近年は東京23区内でも買い物弱者が目立つようになってきています。
都心部では生鮮食品を扱うコンビニやネット通販も登場し、宅配サービスをしているコンビニやスーパーも増えています。東京都心部なら生鮮食品や日用品の調達には困らず、買い物弱者問題は改善してきているような気もしますが……。
「そうした店舗によって、買い物弱者問題が解決したエリアも一部にはあります。しかし、都心部は地価が高いので、生鮮食品などを扱う小売店は採算面から出店しにくい環境にあります」(同)。
■単身高齢者の急増、エレベーターのない団地、都心の生活スタイル…多様化する原因■
さらに、東京では単身高齢者が急増していることも買い物弱者が増えている要因です。単身高齢者が買い物弱者であることは言うまでもありません。また、昭和30~40年代に建設された団地には5階建てでもエレベーターが設置されていないところが多く、高層階の住民が高齢化することで買い物弱者になってしまうケースもあります。
買い物弱者になるのは、高齢者ばかりではありません。都心部では普段の移動は鉄道などの公共交通を使うライフスタイルが定着しているため、日常の買い物は徒歩圏内で済ませるのが一般的です。近所の商店が閉店してしまえば、食料品・日用品を生活圏で購入できなくなります。
自動車を保有していなければ、健康的な若者でも買い物弱者に転落してしまいます。つまり、買い物弱者は、必ずしも地方都市だけの問題、高齢者の問題ではないのです。
■地域の実態に合わせた対策必要■
「買い物弱者が発生する要因は、千差万別です。そのため、その地域の実態に合わせた対策を探らなければなりません」(同)。
経産省では、買い物弱者対策のために自治体や民間事業者と協力してコミュニティバスを運行して買い物を支援することや移動販売車に地域を巡回してもらうなどの施策を講じています。バスを運行する場合はルートや曜日・時間の調整、移動販売車だと、どういった商店がなく何を販売するのがいいのか、といったことなど、地元の自治体や町内会などと協議・調整する項目も多岐にわたります。
「NPOや町内会に協力を仰ぎ、買い物の付き添いや代行サービスをおこなっている自治体もあります。そのほか、自治体が出資する第3セクターや公社が、生鮮食品や日用品を扱う店を出店することもあります。買い物難民対策は、地域の実情によって支援の内容が異なります。簡単には解決しない問題です」(同)。
買い物弱者対策が複雑に絡み合っていることは、経産省のほかにも、所管する官庁が内閣府・総務省・国土交通省・農林水産省・厚生労働省の1府5省にまたがっていることからもうかがえます。行政ばかりではなく、民間事業者・NPO・町内会など、買い物弱者対策は官民一体で取り組む必要に迫られています。
引用元 ヤフーニュース [THE PAGE]小川裕夫=フリーランスライター
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