アベノミクス唯一の“成果”株高もパー いよいよ口を開いたバブル崩壊の序章!五輪などと浮かれていられなくなった!
株価の大暴落が止まらない。きのう(5日)、きょうと週明けから2日連続で東京株式市場の日経平均株価(225種)は全面安の展開だ。一時600円超というきのうの下げ幅は、2016年11月の米大統領選でトランプが勝利した直後の下落幅(1059円57銭)以来、約1年3カ月ぶりの大きさ。終値は昨年の大納会(12月29日)以来、約1カ月ぶりの2万3000円割れとなった。
〈あっという間に200万円も失った。信じられない〉。ネットの株式掲示板は個人投資家らの阿鼻叫喚の書き込みであふれ返っている。
2日発表の米雇用統計(1月)で、賃金が09年以来の高値水準となり、長期金利の指標である米10年債利回りが2・85%と4年ぶりの水準に急上昇。リスクの高い株を避ける傾向が顕著になり、米市場のダウ工業株30種平均が600ドル超の急落。この流れは5日も止まらず、1100ドル超という過去最大の下げ幅を記録した。日本株暴落はおそらく、日本市場で約7割の売買シェアを握る外国人投資家が、米国株の損失を補うために売りまくったのだろう。米国内では雇用回復、賃金増加で利上げペースが加速し、さらなる長期金利上昇が株価下落を招く――との見方が広がっており、投資家心理を測る指標とされる「恐怖指数」=米株の変動性指数(VIX)も急上昇中。今後も日本株はそのあおりを受け、続落する可能性が高い。
■危うい思考停止状態の日本市場■
ついこの間まで、〈26年ぶりに2万4000円台を回復した〉と日本市場が大ハシャギしていたのがウソのよう。国会でアベノミクスの成否を問われた安倍首相が〈全国津々浦々で確実に経済の好循環が生まれている〉と胸を張り、“唯一の根拠”にしてきた株高もこれでパーだ。
もっとも、今の相場は日銀が「異次元緩和」の一環で年間6兆円規模のETF(上場投資信託)を購入したり、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や郵貯マネーなどの公的資金が投じられたりしてきた「官製相場」だ。異常な株高は実体経済に裏打ちされたワケでも何でもないから、いったんはじけたら、どこまで下落するのか分からない。
「いずれ『調整(再び株価が上昇)が入る』と楽観視する声もありますが、そうは思いません。今の株式市場は日銀の大量のETF購入や、GPIFマネーによっていびつに膨らんでいて、もはや(自由な取引市場という)本来の機能を完全に失っている。(中国政府の介入が度々、問題視される)上海市場と変わりません。1日で500円も600円も下がったら、日銀だって買い支えられないでしょう。調整どころか、いつ、どんなことが起きるか予想できない。危うい思考停止状態が今の日本市場。何かあれば、たちまちドカンと大きく下がりますよ」(経済評論家の斎藤満氏)
日経平均株価は今年末には3万円台、20年の東京五輪までに4万円台突入―――なんて浮かれた声も出ていたが、「官製相場の限界」というアホノミクスの底が割れた今、五輪前からバブル崩壊にまっしぐらだ。
■黒田日銀バブルが崩壊すれば真っ先に被害を被るのは国民だ■
4日付の読売新聞で、物価上昇率2%を掲げ、5年近く異次元緩和を続ける日銀の姿勢に対する社説が掲載された。安倍政権「応援団」とは思えないほど、中身は辛辣だ。
〈より柔軟に政策方針を見直す姿勢が問われよう〉〈大規模緩和の弊害は、多方面に表れ始めている〉〈日銀の金融政策頼みでは、脱デフレを確実にするのに限界があることは明らかだろう〉
どの指摘もその通り。日銀が物価上昇率2%達成に拘る余り、市場経済が歪められ、数々の副作用が出ているのではないか、と警鐘を鳴らしているのである。
とりわけ深刻な副作用が表れているのが16年2月から始まったマイナス金利政策だ。日銀は国債発行残高の4割にも達するほどジャブジャブにした緩和マネーを市中に“強制的”に循環させようと試みたが、メガバンクや地方銀行など国内銀行の17年末時点の貸出金の伸び率は2年前の4%増とほぼ変わらず。しかも、融資の内訳をみると、不動産業向けが全体の15%に達し、設備投資といった生産性を高めるような融資につながっていないばかりか、行き場を失った大量のカネが大都市圏の不動産に流れて「投機バブルを招いている」との懸念も出始めた。
それでも不動産融資の需要があるメガバンクなどはまだマシで、高齢化と人口減少で経済規模が縮小している中小企業の多い地方銀行は最悪。金融庁のリポートでは、マイナス金利の長期化が収益力を圧迫し、〈25年3月期には約6割の地域銀行が本業で赤字になる〉と予想されている。
もはやアベノミクス=「異次元緩和」が限界を露呈したのは明らかなのだが、日銀の黒田東彦総裁は、まるで反省しちゃいない。きのうの衆院予算委でも参考人として出席した黒田は異次元緩和について「道半ば。粘り強く続けていく必要がある」と平然と言い放っていたから唖然ボー然だ。アベノミクスの実態を痛烈に批判した「アベノミクスによろしく」(集英社インターナショナル新書)の著者、明石順平弁護士はこう言う。
「日銀はいつまで異次元緩和を続けるつもりなのでしょうか。世界の中央銀行でもこんな例はないし、どんな副作用が出てくるのかは誰にも分かりません。不自然に歪められた株価の上昇は必ずしっぺ返しがある。それは人類の歴史が示しています」
■物価高と増税で個人消費はさらに冷え込む■
本来であれば、黒田日銀は「異次元緩和は誤り」と素直に認めて軌道修正を図るべきなのに、口が裂けてもそう言えないのは、もはや逃げるに逃げられなくなった――というのが本音ではないのか。なぜなら、GDPの6割を占める個人消費がメタメタだからだ。「異次元緩和」で円安・株高が進んで大企業が儲かれば、「トリクルダウン」が起きて庶民のフトコロが潤い、消費拡大につながる――と喧伝されたが、実際は1世帯当たりの実質消費支出は安倍政権誕生前の年間360万円から20万円もダウン。前出の斎藤満氏によると、この5年間で実質GDPが7・2%拡大したのに対し、個人消費は2・3%。個人事業主や持ち家世帯が架空の家賃を払ったとした「帰属家賃」を除く純粋な家計消費はわずか1・1%増だ。
一方で、12月の全国ベースの消費者物価は生鮮食品を含む食料品と電気やガス、ガソリンなどの値上がりで1・3%上昇。2人以上世帯の可処分所得は1997年に月額49万円あったが、社会保険料の負担増などで2016年は約42万円と減り続けているから、この物価高は庶民にとっては実質的な負担増と同じだ。
さらに18年度は庶民イジメの増税が目白押し。70歳以上の患者負担限度額の引き上げや、75歳以上の後期高齢者医療保険料の低所得者への特例軽減の縮小、介護保険の利用者負担の2割から3割への負担増も計画。「中間層狙い撃ち」といわれる年収850万円以上の会社員らの所得増税のほか、たばこ増税、森林環境税、国際観光旅客税もある。
個人消費がますます冷え込むのは分かり切っているから、黒田日銀としては「異次元緩和」を継続しようがしまいが出口はないのだ。金融論が専門の相澤幸悦埼玉学園大教授がこう言う。
「株価連動政権と揶揄される安倍政権を後ろ盾にする黒田日銀としては、このまま突っ走り続けるしかないのでしょう。しかし、おそらく米長期金利はまだ上がる。そうなれば投機筋は『いよいよ株は手じまい』とみるから、株価は今以上に下落する。当然、日本株もつられて下がることになるでしょう。将来、サブプライムバブル崩壊のような現象が起きる可能性は否定できません」
黒田バブルが崩壊すれば、真っ先に影響を受けるのは国民だということを忘れてはならない。
政府御用達読売新聞でさえ批判的だ。「詳しく書いてある」からよく読んでおこう!
記事・画像 引用・参考元 日刊ゲンダイ <巻頭言>
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