省庁の文書は奇怪!「読み人知らず」=内部文書が次々流出…!
ある副大臣経験者によると、各省庁には「詠み人知らず」という分類の文書があるのだという。およそ役人は、どんな会議や打ち合わせでも必ずメモを取るものだが、それを全て清書して公的な文書としてファイルするかといえば、そんなことはない。政治家が無理難題を言ってきて、役人が裏技を駆使して違法すれすれで何とか処理した場合など、情報公開を求められて文書が表沙汰になったら大変だから、公的な文書としては残さない。
とはいえ、何の記録も残っていないと、イザそれが何かの拍子に露見した時に、政治家がシラを切って役人に責任を押しつけようとするかもしれず、自分自身の安全保障のためにもメモを残して、ハードディスクの底かデスクの奥に取っておくことが少なくない。それが「詠み人知らず」文書で、大抵の場合は誰が記録したのか分からないようにしてある。
いま国策を巡って、ポロリポロリと出てきている文書は、どうもこの手のもので、菅義偉官房長官は表向き涼しい顔をしてこれを「怪文書」扱いにしてやり過ごそうとしているが違和感がある。表面上の対応とは違い、内心は戦々恐々で、誰が漏らしたのか徹底的な犯人捜しを命じて、これ以上のダダ漏れを防ごうと必死になっている。そのこと自体が、自らの「問題ない!」いっている内容とは違い「懸念を払拭」出来ない原因になっているのではないかと皮肉な結果になっている。「ところが」と、ベテラン政治記者が言う。
「森友学園問題はエリート官庁の財務省だからまだ統制が利く。籠池前理事長側がどんな隠し玉を持っているのかだけが気掛かりだ。ところが加計学園問題は文科省と内閣府で、一流とはいえない官僚たちを相手に、官邸も四苦八苦している状態。そこへ、北村直人元自民党衆議院議員が朝日新聞の取材に応じて、自分の名前も出てくる文書に記されていることは『事実だ』と証言したので、官邸は全くのパニック状態に陥っている」
北村元議員は自身が獣医師で、今も日本獣医師会顧問。医師会はもちろん、いかなる獣医学部の新設にも反対で、北村もそのために昨年秋には石破茂前地方創生大臣や山本幸三特区大臣と会って加計学園問題で話をしている。そのことが書かれた文書を当人が本物だと言っているのだから、怪文書として葬るのは難しくなってきた。22日にも共産党の小池晃書記局長が国会で、また文科省が作成したとみられる新たな資料を公表。それは政府関係者から入手したもので、これをもし怪文書と呼ぶなら、その政府関係者を国会招致せよと求めた。政府の強気な態度と、強引な官僚犯人捜しで、もはや堤防決壊寸前にまで来ているのではないか!?
高野孟(ジャーナリスト) プロフィール
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。
記事・画像 引用・参考元 日刊ゲンダイ <永田町の裏を読む>
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