マイナス金利で大幅減益に陥った地銀106行の青色吐息!
「(貸出金の)ボリューム増が利益増に繋がらない」「稼ぐ手段がみつからない」……。呻きとタメ息が交錯した地方銀行の決算発表会見。
金融庁が先週2日まとめた埼玉りそな銀行を含む地銀106行の17年3月期決算(単体ベース)は本業の儲けを示す実質業務純益が1兆2834億円と前期比19.4%の大幅減益を記録。純利益も同14.7%減って1兆2億円とリーマン・ショックに見舞われた09年3月期以来、8年振りのマイナスに陥った。18年3月期も収益環境は厳しく、純利益は1兆円割れが確実な情勢だ。
実質業務純益が20%近く落ち込んだ最大の要因は、日銀のマイナス金利政策導入を受けた利ザヤの縮小だ。大半の地銀で総資金利ザヤが0.1%未満に低下。東邦銀行など一部の地銀では“逆ザヤ”に転落した。
このため貸出金の残高自体は251兆円と前期末比3.7%拡大したものの、その利息などから得られる資金利益は逆に同3.6%減少。保険などの販売手数料からなる役務利益も、マイナス金利による運用難で生保などが人気の高かった貯蓄性商品を売り止めにしたこともあって、同8.5%後退した。
米国債をはじめとした外債投資の“失敗”も利益を押し下げた。なかでも足を引っ張ったのが静岡銀行だ。米長期金利の上昇で価格が下落し、多額の含み損を抱えていた債券を一気に損切り。373億円もの売却損を計上し、実質業務純益は同70.6%減の193億円にまで急降下した。前期と比較した地銀全体の実質業務純益の落ち込み幅は3071億円。静岡銀の減益分だけでその15%超を占める計算になる。
もっとも金融関係者の間では「(財務にゆとりのある)静岡銀だからこそできた芸当。他では真似できない」との声が圧倒的だ。実際、130億円の外債含み損を計上した池田泉州銀行をはじめ、大半の銀行は損失処理を今期に先送り。ユーロ債や国内株式の益出しなどで穴埋めしていく方針だ。
市場からは「収益悪化は想定以上。再編待ったなしだ」の声も上がる。
重道武司 (経済ジャーナリスト)profile
1957年鳥取県倉吉市生まれ。84年フジサンケイグループ傘下の経済紙「日本工業新聞」(現フジサンケイビジネスアイ)の記者となり、千葉支局を振出しに鉄鋼、自動車、総合電機、財界、金融、エネルギー(電力・石油・ガス)などの業界を担当。2000年外資系通信社に転じた後、02年からフリーに。得意分野は通信社時代を含めて在籍足掛け7年にも及んだ日銀記者クラブ時代に人脈を培った金融。自動車業界にも強い
記事・画像 引用・参考元 日刊ゲンダイ
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