熱帯夜の季節になると、寝具売り場が活況を呈するが、次々と新製品をはじめ、いろいろな夏用寝具が陳列される。少しでも熟睡できる為には、どのようなものを選んだらよいのだろうか?
先ず注意する点は、暑いからと言って「体を冷やせばいい」と単純に考えてはいけない。それは睡眠の質が低下するだけでなく、体調も悪くしてしまいます。
ヒトの体温には、2種類あります。1つは、「表面体温」☜普段体温を測る時の体温、ともう1つは、内臓の温度である「深部体温」である。良い睡眠に入るには、深部体温が下がることが前提条件になります。ヒトは、この2つの相反する作用によって体温を保っているのです。からだの表面が暑くなると、汗をかいて、放熱し、深部体温を下げる。表面が冷えると、鳥肌状態にし、熱の放出を食い止め、深部体温を上げるというメカニズムになっている。
その為、ベッドに冷たいジェルシートを敷いて寝ると、体の表面が冷えて、如何にも寝れそうな気持になるが、実際はそれによって、深部体温が高くなってしまい、眠りに入るのも、不覚眠りに付くことも難しくなってしまうのである。という訳で、体の表面を冷やし続ける寝具は適当ではないという事になる。ではどうするか!? シートを選ぶなら、触った瞬間だけ、ヒヤッとする「接触冷感」や、素早く汗を吸収してくれる「吸湿即乾」のものを揃えれば体の表面を冷やし過ぎることなく、自然に体温調節することが可能です。
体温調節に重要なものが「寝返り」です。大体1回の睡眠で、20回程度の寝返りをしていますが、それは長く同じ姿勢で寝ていると、マットと体表面の間に熱が籠るので、位置を変えることによって、その部分の熱を放出しているのです。寝返りは、そのまま横に転がるのではなく、1度体を持ち上げて、空中で向きを変えるので、体の位置は変わりません。つまり寝返り能力とは、「身体を持ち上げる」ことを言うのです。そこで自分に合った寝返り能力のマットを選ぶ必要があります。
筋肉質で、運動能力が高い人は、柔らかいクッション性のマットレスや、低反発性マットレスであっても、スムーズに体を持ち上げることが出来ます。一方運動習慣の余りない人は、このようなマットレスでは、寝返りがうまくできず、熱を籠らせてしまって、暑く寝苦しい状態になってしまいます。このような人は、硬めの布団や、抗反発マットレスを使った方がよく眠れます。
われわれは単純に「冷やせばいいや!」と考えがちだが、実際は「深部体温」というものがあり、良い睡眠に入るには、それを下げなければならないのに、逆に上がってしまう結果になり、寝苦しい状態をきたしてしまうという皮肉な結果になることが分かった。このように表面上良かれと思ってやることが、その過程で、逆転してしまって、悪い状況に陥ってしまうというような事が儘存在する。特に健康面ではそういう事が多い。体のメカニズムは、複合的に関連しており、どのような仕組みで機能しているかを知らないと、あたら良いと思ってやったことが命取りという事もあるのだ! 「自分の健康は自分で守る!」には、そういう機能や、メカニズムを知り、単純に表面上に見えることのレベルでの対処を排除していかなければ達成出来ないのです!
※日刊ゲンダイ「寝苦しい真夏の夜!スッキリ乗り切る!」シリーズ 作業療法士菅原洋平氏 参照。
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