脳は鍛え方次第で、歳をとってでも記憶力はアップする可能性が大である!

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脳は鍛え方次第で、歳をとってでも記憶力はアップする可能性が大である

 

「覚えた筈なのに、すぐ忘れてしまう」「なかなか頭に入らない」という方は決して少なくないと思います。もし記憶力を高めたいなら『「覚えられる」が習慣になる! 記憶力ドリル』(枝川義邦著、総合法令出版)が役に立つかも知れません。脳神経科学を専攻する脳科学者、枝川氏が、記憶力をアップさせるための方法を紹介したものである。一部を抜粋してご紹介しましょう!

 

私たちの脳には、興味があること、必要なことを優先して覚えていくという性質があります。そうでないものは後回しになって、記憶できずに脳から消えていってしまう事もあるのです。良く知られている事実ですが、脳を鍛えることで、うまくコントロールする事(記憶が)も出来るようになっていきます。本書は「イラストや画像を主体とした課題」が中心になっていて、それらを解きながら、無理なく記憶力をアップさせていく仕組みになっている。

 

さてその前段階の話として、「人はなぜ忘れてしまうのか? 記憶のしくみ」に焦点を当て、基本的なことがらを考えていきましょう。

 

  • 子どもの頃を思い出すと記憶力がアップする?

 

「子どもの頃にはいろいろな事をすぐ覚えられたのに、最近は記憶するのが苦手だな」と感じている人が多いのではないか。子どもの頃に多くの事を「そのまま」覚えることが出来たことには、明確な理由があるのだ。

 

そもそも脳でつくられる記憶には幾つかの種類があり、そのなかにはトランプの神経衰弱ゲームのように、単なる数字やマークの羅列など、子どもの脳だからこそ覚えやすいタイプの記憶があるというのです。そして、このタイプの記憶は大人になると覚えにくくなるものなので、大人はそれを「記憶力全般が衰えた」と感じてしまうのです。しかしこれは脳の性質が変わる事が原因なので嘆く必要はないそうだ。

 

もうひとつのポイントは、「子どもは楽しみながら覚えている」という事で、これは記憶するときの秘訣ともいえるそうです。子どもは一度興味を持ったものは、集中力と記憶力によって一気に脳に刻んでいきます。でも、それは大人も同じ。好きなものには興味を持って接するので、すぐ上手になり、記憶にも残りやすい訳です。つまり、子どもの頃の状態を取り戻せば、大人になった今からでも、記憶力をアップさせる事が出来るということになる。

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ところで、「楽しい」という気持ちは、同時に生じるいくつもの変化が合わさることで生じるのだ。なかでも「楽しい」気持ちになる事に深い関係があると言われているのが、”ドーパミン”と呼ばれる物質。脳でドーパミンが増えると、「楽しい」という気持ちだけでなく、記憶力もアップすることが知られている。だとすれば、脳でドーパミンが増えるようにする事が、「楽しんで記憶する秘訣」だという事になる筈。では、どのようにしてドーパミンを増やせばよいのでしょうか?

 

ドーパミンは、脳の中にある「報酬系」と呼ばれる神経ネットワークでつくられ放出されている。報酬系とは、報酬によって欲求が満たされることが期待される時などに活性化し、快い感覚をもたらす神経系統のこと。この報酬系の神経ネットワークが活発に働けば、脳内で働くドーパミンの量も多くなるという訳です。

 

そして報酬系の神経ネットワークは、「ご褒美」との関係が深いものなのだ。何かご褒美が手に入ると期待できる状況では、脳でも報酬系の神経ネットワークが盛んに活動しているということ。

 

「おいしいスイーツをたくさん食べること」だとか、あるいは「仕事でほめられること」だとか、ご褒美と感じるものごとは人によってさまざま。しかし、それでいいのだそうです。なぜなら、ご褒美と感じるものの種類がバラバラでも、脳のなかではどれも報酬系の神経ネットワークの活動を活発にしてくれるから。別な表現を用いるなら、脳のなかでは、このネットワークが働くことが、その人にとっての「報酬=ご褒美」だということになるのです。

 

いわば、スイーツやほめられることは、脳のネットワークを働かせるためのスイッチのようなもの。そのスイッチが入れば、脳で報酬系の神経ネットワークがさかんに働き、ドーパミンが増えていくというわけです。だからこそ、大人になっても、子どものときのように楽しむ姿勢を持つことで、脳のなかでドーパミンが増え、記憶力アップにつながるという。

 

  • 大人になったらなぜ、学校で勉強したことを忘れるのか?

 

記憶とは、その環境に最適な振る舞いができるためのしくみなので、必要な情報が優先的につくられる性質がある。新しいことを覚えて脳に定着させるための場所は「海馬」。新しい記憶をつくるときに、「その情報は自分にとって必要かどうか」を選別して脳に刻み込む準備を進めるところだといいます。

 

普通に生活していれば、脳には多くの情報が入ってきます。しかし、そのすべてを記憶として脳に収めていたら、脳は数分で満タンになってしまう。そこで海馬が、本当に記憶として長期的に脳に残す価値があるのかどうかを見極めるということ。海馬が認めてゴーサインを出した情報だけが、記憶として脳に定着するわけです。

 

私たちは、外界から絶えず五感の情報を取り入れながら生活しています。いうまでもなく五感とは、目で見る(視覚)、耳で聞く(聴覚)、鼻で匂いを嗅ぐ(嗅覚)、舌で味わう(味覚)、皮膚などで触る(触覚)ことをしたときの感覚。これらはアンテナの役割を担っていて、私たちを取り巻く状況をキャッチするために、それぞれの感覚が得意とする情報が流れてこないか待ち受けているのだそうです。

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そして、五感のアンテナがキャッチした情報のほとんどすべては、海馬に送られることに。そのなかで必要な情報は、海馬の神経ネットワークを活発に働かせることによって、記憶として脳に刻まれていくというわけです。

 

この場合の「必要な情報」とは、「繰り返し脳に入ってくる情報」のこと。頻繁に脳に入ってくる情報は、繰り返し海馬に送られて「必要な情報」として認められ、”記憶”として脳に定着していくことになるということ。

 

たとえば学校で学んだ「知識」の多くは、仕事をしているとたいして使う場面もなく、いつの間にか忘れられていくものだといいます。それは知識の土台としてなくてはならないものですが、実社会でその知識自体を使う場面は少ないわけです。特に勉強する際、テストのために一夜漬けで頭に詰め込んできたタイプの人は、テストが終わると、その情報にほとんど触れないまま卒業することが多いもの。しかしそれでは、海馬がその情報を「必要」と認めることもないため、記憶には残らないというわけです。

 

なお、せっかく定着した記憶も失われてしまう可能性があるのだそうです。海馬が「必要な情報」として認定したものは「長期の記憶」として脳に長く留まることになります。しかし脳では、次から次へと新しい記憶がつくられているわけです。そのため、たとえ脳のなかでうまく整理されていたとしても、たまに引き出さないと、新しくできた記憶に埋もれたり、思い出せなくなってしまうというのです。場合によっては、「もう必要ない情報」となって頭のなかから消えていってしまうこともあるのだとか。

 

脳にはくり返し接する情報を、そのときの自分にとって「必要な情報」として記憶する性質があるため、「必要ならば、たまに思い出す」ことが大切だというわけです。学校で学んだことがらにしても、たまに思い出すことで記憶として残りやすくなるといいます。その際、興味を持って、さらにそれに関連することを調べたり覚えたりすることを楽しめれば、さらに記憶は定着しやすくなるという。

 

  • 記憶のしくみとは?

 

記憶には、3つのステージがある。まず最初の「記銘」は、脳に入ってきた外部からの情報を、記憶の情報として脳に獲得していくステージ。次に、その情報を蓄えておく「保持」のステージ、そして、それらの情報を思い出す「想起」のステージと続く。

 

一般的に「記憶力がよい」「よく覚えられる」といわれる人は、「記銘」のステージが優れている場合が多い。記憶力が良いだけでなく、覚え方がうまいということもある。そして、かなり昔のことをいつまでも覚えていられる人は、「保持」や「想起」のステージがよく働いていることになるのだ。

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逆に「ど忘れ」して覚えていた筈の事が言葉に出てこない場合は、「想起」のステージがうまく働いていないということ。よく知っている筈の友人の名前が出てこないことがあるが、それはこのケース。また宴会などで盛り上がり、「飲みすぎて、昨夜のことはほとんど覚えていない」という場合は、「記銘」のステージがうまく働いていないのだ。

 

これは、お酒のアルコール(=エタノール)が、記憶をつくるための神経ネットワークの働きを弱めてしまうからだと考えられている。特に、記憶ができるときに活性化して情報を運ぶ役割を持つ、タンパク質の働きが妨げられてしまうのです。

 

脳で記憶がつくられるときには、五感のアンテナから入ってきた情報が海馬に送られてくる。そして海馬では、その情報を長期の記憶として脳に刻んでよいかどうかの選別をしていくわけです。つまり、脳のなかに短い時間しか留めておけない「短期記憶」を、何年もの長い間留めておける「長期記憶」に変換していくわけです。

 

記憶に残そうとするときには、海馬では神経ネットワークが特別な働きをしているといいます。特に「可塑性」と呼ばれる性質が働くと、海馬のしくみが記憶に残そうとしてくれるわけです。この可塑性とは、強い刺激で起きた変化をそのまま残す性質のこと。粘土のかたまりを指で押すと形が変わりますが、指を引き抜いても形はそのまま残ります。この性質が「可塑性」。

 

つまり可塑性とは「変化を保存する性質」だということ。勉強したりして脳の海馬で可塑性が働く状態になると、新しく学んだ内容が脳に保存される。それが、脳のメカニズムということだ。

 

こうした基本を紹介したうえで、次章では、記憶力を高めるための親しみやすい問題が続々と登場する。それらを楽しみながら解いていけば、いつしか記憶力がアップしているという訳です。この本には、知識を得ながら、

同時に知らず知らずうちに記憶力がアップできるという本である。

 

引用元 lifehacker / 2016年10月11日 6時30分

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(印南敦史)

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