まほろばの国 女人高野! 室生寺から仏隆寺に抜ける山道にある西光寺の枝垂れ桜!
ある年の「週刊現代」か、「週刊ポスト」のグラビアに、室生寺の奥の小さな西光寺の庭にある1本の枝垂桜の満開の写真が載っていた。
その時は京都支店に勤務中のときで、室生寺など何回も訪れていたので、櫻の咲く頃には行ってみようと思っていた。室生寺は「女人高野」と呼ばれ、高野山男子禁制だったのを受け、数多くの信仰深い女性を受け入れた寺である。室生寺に参詣する為に向かうルートは4つあって、それぞれに案内寺という寺を伴っている。室生寺に入る橋に至る道をそのまま通り越し、橋本旅館まで行く手前の坂道に右折して入ると、底海道といい、その山道を3・4kmほど行くと、海道の仏降寺と言う名刹に出る。それを知っていたので細い山道だったが車を走らせた。暫く奔っていたら、右側に小さなお寺がポツリとあり、境内の入り口に立派な枝垂桜があった。早速境内に車を乗り入れ一休みする事にした。その時件の「グラビア」が頭を過ぎった。果たして寺の名前は「西光寺」だった。それは小さなお寺だったが、入り口に聳え立っている枝垂桜はお寺の屋根をすっぽり覆い隠すような立派な櫻だった。いつもそうだが、目的地を決めて出掛ける事はあまりないので、こういった偶然に思わぬものに遭遇する場合が多い。季節は櫻の頃ではなかったので、その絶頂期の姿は勿論望めなかったが、それだけに、春先には絶対来ようと心に決めた。
この峠道の頂上を超え、降り切ったところに、先程の仏降寺がある。このお寺も山の中腹にあり、境内に入るには長い石段を登らなければならぬ。
この上り坂の中程に、ここにも立派な桜の木がある。ここのお寺も前段の西光寺に行った時、山を越えて着いたのではなく、反対側の方から回り込んで、偶然目に飛び込んだ案内板を頼りに辿り着いたのだった。将に山道に入ろうというところに、駐車場があり、そこから斜めに道筋がついた坂を登って行くのである。長閑な景色であった。197段の階段の中ほど左手に樹齢500年といわれる櫻がどっしりと腰を据えている。ヤマザクラとエドヒガンの雑種であるモチズキザクラの一種といわれ、奈良県指定天然記念物である。奈良県随一の巨樹であるという。これも花をつけたらさぞかし綺麗だろうなあと充分予測できる櫻であった。未だ春とはいえ寒さもぶり返す時期だったので、次回を期す事にした。この階段を登りきったところに本堂があり、丁度ご住職の奥様が境内の掃除をしていたのだが、私が入ってきたので、「ご参拝されますか?」と声を掛けてくださった。「はいお願い致します」と答え、本堂に入らせていただいた。
拝観者は小生のほか誰一人居らず、にも拘らず、奥様は懇切丁寧にお寺について説明して下さった。ご本尊として聖徳太子作とされる十一面観音立像が祀られている。当寺は、空海が唐から持ち帰ったと伝えられる茶臼があるのだそうだ。他に元徳2年(1330年)の銘がある十三重石塔、また本堂裏手には、重要文化財指定の石室がある。内部には堅恵の墓と伝えられる五輪塔があるそうだ。
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