森友学園問題をより理解する為に!財務省理財局とは何じゃらほい!坂東太郎のよく分かる時事用語解説
世間を騒がす「森友学園」問題の発端は、大阪府豊中市にある国有地が異様に安い値段で学園側へ売られていたという調査および報道でした。その売り主は財務省理財局。国会審議やニュースでも「リザイキョク」という少し聞き慣れない部署の名前が頻繁に登場しました。一体どのような組織なのか。調べてみました。
■財務省理財局が売り主! まず払い下げ問題の経緯をおさらい!■
問題の国有地の持ち主は「国土交通省大阪航空局」。そして、国有地など国有財産を売ったり貸したりするのが「財務省理財局」の仕事。財務省の出先機関である「近畿財務局」が2013年6月から9月にかけて売却先を公募しました。
2015年に学園は近畿財務局に「買い取り」ではなく「借りる」形にできないかと要望。適切な売り手かどうかを検討する「国有財産近畿地方審議会」では、財務面に不安がある学校法人に国有地をあてがうのはいかがなものかと異論が噴出します。それでも財務局側が押し切って2月、審議会が「買い受け特約付きの定期借地契約」での「認可適当」と答申したのを受けて5月に契約しました。
翌2016年3月、借地での契約後に小学校建設を進めていた学園が、工事中に新たなゴミが出てきたと国に連絡します。その際に「国のゴミ撤去を待っていては開校できない」と一転して借地契約から購入へ変更してほしいと要望。4月、国は学園側にこれまでのゴミ撤去や除染費として1億3200万円を支払いました。
翌月「土地価格は9億5600万円」と不動産鑑定士が査定し、6月に約8億円を値引きした1億3400万円で学園側に売却されました。学園側は金額表示をしないよう近畿財務局へ要望し、なぜか財務局も応じました。この経緯を小学校建設予定地の豊中市議と朝日新聞が追及して公となり騒動が始ったのです。
■国有財産を売り、貸したり財務省理財局とは具体的にどのような部署なのでしょうか■
財務省には主計局をはじめ、主税、関税、理財、国際の5局が置かれています。
その中で、国有地など国有財産を売ったり貸したりするのが理財局です。国庫課、国債企画課、財政投融資総括課、国有財産企画課など9課が配置され約360人の職員が働いています。「理財」とは経済に似た意味で「貨財を有利に運用する」行為を指します。
森友学園問題で浮かび上がったのは国有地の売買をめぐるいくつかの謎。国有地は国有財産の一つです。財務省サイトでは、理財局の仕事を「国有財産の有効活用方策を検討し、必要な調整を行うほか、国家公務員宿舎の管理、国の出資や政府保有株式の売却等に関する事務を行っている」と説明しています。
国有財産すべての合計額は約100兆円に上ります。国有財産は「行政財産」と「普通財産」に分かれ、行政財産は「行政に使うため売れない国有財産」。皇居、国会議事堂、裁判所や防衛施設などです。
一方、普通財産は行政財産以外のすべてを指し、独立行政法人などへの出資が大半を占めます。かねてから天下りの温床と指摘されている組織への出資は批判も多く売却などを進めている最中です。他には在日米軍施設や代々木公園など地方自治体へ貸し付けている財産、そして未利用の国有地が約4000億円あります。
■売却先にふさわしいかを審査■
売却は公での使用を優先し、地方自治体などからの要望を優先して3か月間受け付けます。手を上げた団体があれば、全国10か所にある財務局(財務支局)の審査を2か月間受けます。出先機関だけで手に余る事態などが発生すれば、理財局の国有財産業務課国有財産審理室と情報交換しながら審理していきます。売却または貸し付けの相手にふさわしいと決まれば、有効期限2年以内で契約を結びます。
公の組織から要望がなければ一般競争入札がなされ、一番高い値をつけた者が買います。買い手がなかなか見つからない場合は維持管理費などがもったいないので、一時貸し付けや事業用定期借地といった一時的な活用も検討されます。一般競争入札で売れ残った財産も対象になります。
折からの財政難で、国は未利用ではないけれど不必要な土地は売却する方針です。例えば中央府省の幹部はかつて、東京23区や道府県所在地に豪勢な一戸建ての「官舎」に住んでいましたが、今ではなくなりつつある風景です。
東京・赤坂の防衛庁檜町駐屯地跡は複合施設「東京ミッドタウン」に、品川の内閣法制局長官公邸跡地はマンションの「ザ・パークハウス 池田山」へと変貌しました。中野の警察大学校跡地はオフィスビルや大学が集う「中野四季の都市」としてにぎわっています。
学校法人の例としては東京外国語大学が府中市の米軍調布基地跡に移転したケースがあります。
■「随意契約」で払い下げ! 森友学園は「随意契約」で国有地を買い取りました。国が選んだ相手と契約する方式です■
会計法は国有財産などの売却を「公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならない」としています。つまり原則は競争入札なのです。随意契約だとどうしても癒着が起きやすいのと、不当に安い価格での売却が国民の資産を損ねるためです。渦中の近畿財務局もウェブサイトで「未利用国有地については公用・公共用の用途に利用するために地方公共団体等に直接売却する場合を除き、一般競争入札によらず特定の企業や個人に対し売却(随意契約)することはありませんのでご注意ください」と「注意喚起」しています。ちょっと驚きですね。
一方で、会計法は「政令の定めるところにより」との条件で随意契約を認めています。「予算決算及び会計令」です。
政令とは国会で定められた法律の規定を実施するために内閣(要するに府省の官僚)が制定したルールです。具体的な手続きを示したり、場合によっては罰則も設けられます。1つの国会で作る法律はかなりの量で、細かいところまで書き込んでいたら大変。そこでこうした制度を用いて実施する行政に具体化を依頼します。ただし国民の権利や義務に影響を与えるような場合は特に慎重な検討が求められます。
森友学園のケースは「公共随意契約」と呼ばれ、公の目的で買い取りを希望する学校法人を財務局が選んで金額を決めました。
■国の借金依存で存在感高まる■
財務省は旧大蔵省時代から、国のお金の使い方(歳出)を事実上決める主計局や、税の集め方を考える主税局の存在感が大きく、理財局は影に隠れがちでした。
戦後の理財局が力の源泉としたのは「財政投融資(財投)」。郵便貯金や国民年金、厚生年金の積立金すべてが理財局所管の「資金運用部」へ預託され、政府系金融機関や道路公団などの特殊法人に貸し付けられていました。「第二の予算」とまで呼ばれたほどのばく大な金額です。ただ税と違って、財投は預かった金なので返さなければなりません。甘い貸し付けで焦げつこうものなら国民負担につながる恐れがあり、2001年からの財投改革で預託義務が廃止となりました。理財局そのものもまた一時期「廃止」直前まで追い込まれます。
復活したのは理財局の持つ国債(国の借金)の発行と管理権が見直されたからです。戦前の反省から、財政法で赤字国債は発行できなくなりました。しかし1965(昭和40)年に「特例法」制定で封印が解かれると、1975(昭和50)年に赤字国債が再開。近年では当たり前のように発行され、積み上がった借金は1000兆円を超えます。
国債発行がなかった時代には理財局の出番はなし。再開後も日本国債の信用は高く金融機関が入札抜きで受け入れていました。
しかし今は違います。歳入(1年間の国の収入)に占める国債発行は4割にも及び、それなしでは立ち行かなくなりました。いくら主計局が歳出を握っていても、歳入が追いつかなければ予算は組めません。金融機関も以前よりずっと警戒するようになりました。
2008年のリーマンショックは日米欧の経済を直撃し国債の追加発行を強いられました。発行しても金融機関などが買ってくれなければ単なる紙くずです。買い手とのコミュニケーションを通して何とか乗り切りました。
この頃から「理財局は市場と対話できる」と株が上昇していきます。国債の価値が下落すると金利は上昇します。すると借金漬けの日本の利払いも急上昇してしまいます。そこで役立つのが理財局の管理能力。皮肉にも、国の借金依存が理財局の価値を高めている構図です。
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■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など
引用・参考元 ヤフーニュース < THE PAGE >
画像元 yjimage
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