退職後の「お気軽=悠々自適生活」は夢のまた夢になってしまったか!?

老人問題

退職後の「お気軽=悠々自適生活」は夢のまた夢になってしまったか!?

 

就職して約40余年に亘り、一生懸命仕事に励み、定年を迎えた。小生のサラリーマン時代は、売り上げは、毎年アップし、給料も曲りなりとも毎年上がり、退職金もそれなりに出た。年金も頼りになった。しかしここ10年、雇用形態も、大きく変わり、修身雇用などという言葉は死語となった。大手企業でも「副業を認める」ところも出てきた。一昔前なら、「副業などは職務怠慢!絶対御法度!」な代物であった。隔世の感がある。

 

そんな時代、60歳になったら、スパッと会社を辞めて、その後は、のんびり悠々自適に暮らしたい、事実そういう老後生活が出来ると思っていた。小生は団塊世代の走りで、修身雇用の時代の最後の層である。しかしそれは同時に年金需給年齢の先延ばしが開始された年代でもあった。60歳世代から受給年齢が1歳づつ後ろにズラされ、「昭和36年4月2日生まれ以降」の男性層は、全員が65歳以上にならないと満額支給されなくなった。(小生のころは60歳で受給しようと思えばそれが可能だった)即ち停年から年金満額支給までの空白期間が生じる訳で、60歳以降向こう5年間の生き方が、「幸せな老後生活できるかどうかの分岐点」となるという時代になってしまった。

 

そこで停年は迎えたが、嘱託などの形で、引き続き稼がねばならないという事になったが、希望者全員が65歳(以上)まで曲りなりとも働ける会社は、平成27年厚労省の集計で、大企業の73%、中小で75%、本人が希望すれば働ける環境となった。辞めるにしろ、継続するにしろ、先ずこの時点で選択を迫られる。

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ここでシミュレーションをしてみる。上場企業(1000人規模)に勤務している、同期のA・B・C3人の、年金満額支給までの空白期間の過ごし方のパターン別のその後の(老後)生活を想定してみる。そのパターンとは、A☞継続雇用、B☞アルバイト生活、C☞何もしないで悠々自適(のつもり)の3通り。退職金は2357万円と想定。さて65歳以降どういう展開となるのか!?

 

【A☞継続雇用の場合】

Aさん定年時の年収は800万だったが、継続雇用に切り替わった途端、嘱託社員の身分に変わり、440万円(45%減)の年収となった。(厚労省「高年齢者の継続雇用の現状と課題<平成26年版>によると、1000人以上の大企業の継続雇用者の60%が40~50%以上減額されている) それでもこのケースでは、夫婦2人で、なんとか暮らしていけそうな事例となる。退職金も65歳時点で、減らさずに手元に残せる可能性がある。但し停年退職までに、子供が自立していることと、住宅ローンなどは完済出来ていることが大前提の話である。これらが出来ていないと、貯金[あったらの場合]+退職金を切り崩す運命が待っていることになる。

 

【B☞アルバイトの場合】

Bさん!退職時「給料を半減されて迄も会社に居たくない! 元部下に対して上司顔されたくない!」とばかりに会社には残らず、気楽なバイト生活を選択した。運よく近所にあるショッピングモールにバイト先を見つけた。主婦などからのクレーム処理、バイト仲間となった生意気な高校生のタメ口にも耐え、ちっとも気軽ではない毎日を送る羽目に陥った。現実は甘くないとしみじみ思ったが後の祭り。そんなにまでして耐えた結果の肝心の給料は、「166720円」<都における平均時給1042円X8時間(1日の勤務時間)Ⅹ20日(月の稼働日)で計算>だった。ため息が出るBさんだったが、この場合は残念ながら、毎月8万円ほど生活が不足する計算になる。65歳まで手持ち金を切り崩すことを繰り返すと、8万X12ヶ月X5年=480万円を失う計算になる。これだって夫婦のどちらかが大病になったり、災害で家を失ったりすれば、即貯金が無くなるどころではなく、借金までしなくてはいけなくなり、老後破綻が現実のものとなる。高齢者には銀行も金を貸してくれなくなる。

(未だBさん就職が出来たからいいが、現実は働き口が中々見つからない!ましてや65歳を超えると、皆無状態!また応募者が多くなったので従来に比べてバイト代も低くなった!)

 

【C☞何も収入を得ようとしなかった場合】

Cさん!現役時代にローンは完済し、「なんか文句あるかい!」とばかり粋がって、収入を取る手段を選ばなかった! 1ヶ月24万円の生活を続けた。5年間で、24万X12ヶ月X5年間=1440万円。退職金は1/3程しか残らない計算になる。別に誰に気兼ねすることもない生活だが、年金支給の65歳までに、轟沈しそうな生活に落ちてしまう。その後漸く年金が支給されても、毎月6万円、年間では72万円持ち出しの生活を余儀なくされる。何の大病も罹らんで済んだとしても、その後蓄えは10年持たない状況に陥る。しかも年金支給額は減額必至の状況である。暮らしていくだけで精一杯で、とてもリフォームするとか、病気すらできない。介護状態になって老人ホームに入るなんぞは、「夢のまた夢」となる!

 

年金なんかは、「(現役時代の給与の)半分は大丈夫」などと喧伝しているが、現実離れした経済状況を前提にしての大甘な試算で現実的に在り得ないという代物である。前述のABC3パターンの場合だって、年齢を重ねれば、病気にもなる、何時までも雇ってはくれない、子が非正規で首でも切られれば放っておく訳にもいかないなどなど、生活破綻の可能性は増える一方である。その上更に(先延ばしされたが)消費税は何れ上がる、社会保障は削られる、入院すれば早く追い出される、物価は上がるなどなど、生活できなくなる要因が目白押し。これでは老人破綻に陥らない方が奇跡である。

 

女流作家のSA氏が、老後破綻するのは、「(現役時代の)本人の努力が足りなかったからだ!自己責任だ!」などと述べていたが、個人のレベルの努力云々の問題を超える、社会のシステム上の要因が非常に高いと言わざるを得ない状況だ。SA氏は、また「老人は<充分生きてきたので>生に固執せず、程ほどにこの世から去るのが望ましい」というような発言もしたが、おそらくこのような状況は知らないのだろう! 一生懸命働いてきた挙句の果てに「老人破綻」が待っているとしたら何のために頑張ってきたのか解らない。希望が持てない時代になった。

 

【老後生活の参考データ】

年金生活者の世帯の実収入・消費支出☜「総務省世帯属性別家計収支<2人以上の世帯>」に依ると、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯の実収入(社会保障給付など)は21万3379円。消費支出(食費、住居費、光熱費、税金などを含む)は27万5706円で、6万2327円不足すると報告している。すなわち手持ち金からの持ち出し状態が普通で例外ではないという事だ。

【退職金額】

経済連、東京経営者協会の、「2014年9月度、退職金、年金に関する事態調査結果」によると、60歳、大卒総合職の退職金は、「2357万7000円」と報告している。

 

※日刊ゲンダイ「人生を左右するお金の問題」シリーズ コラム参照。

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