「治療しない」も立派ながん治療選択肢!データが実証! 特に高齢がん患者は「治療しない」をもっと考えよ!
がんの治療は、手術と放射線、抗がん剤が3本柱で、根治できるのは手術と放射線です。血液がん以外の固形がんを抗がん剤で根治する事は先ずできません。これがセオリーですが、75歳以上の高齢者はケース・バイ・ケースで“治療しない”という選択肢もあり得るということをご存じか!?(抗がん剤治血液がん=白血病など以外には効果が薄いと言われているが、これを奨める医師は多い!抗がん剤は、造血細胞も攻撃してしまうから、免疫細胞にも打撃を与え、がんと闘う機能を弱めてしまうという欠点を持っている。多くの医師は、自分ががんになったら抗がん剤は使わないと言っている!)
国立がん研究センターは今年8月、がん治療の実態調査を発表。それによると、ステージ4の大腸がんで治療しなかった人の割合は、40~64歳で4.6%でしたが、65~74歳で6.7%に上昇。75~84歳は14.7%に急増し、85歳以上は36.1%に上っています。
ステージ4の胃がんはその傾向がさらに強く、75~84歳で24.8%、85歳以上では56%と2人に1人です。ステージ4の肺がんも同様で、85歳以上は58%が治療を受けていません。他のがんのステージ4でも、年齢が上がるほど「治療なし」が増えています。
俳優の愛川欽也さんは2年前の4月、肺がんで亡くなりました。80歳でした。その前年の12月にがんが見つかったときには末期で、入院を必要とする治療を拒否。通院で受けられる放射線のみに留めたのは、長寿番組への出演を切望したためと報道されました。愛川さんのケースは必ずしも「治療なし」ではありませんが、その根底にある考え方は共通します。よりよい生き方、自分が望む最期を全うするために、「治療なし」や「最小限の治療」を選択するのです。
実際、国立がん研究センターの調査では、ステージ4の肺がんの場合、75歳未満だと抗がん剤治療を受けた方が有意に長生きでしたが、75歳以上では延命効果が認められませんでした。75歳以上の対象者は19人と少ないため、科学的に判断するには大規模調査が必要ですが、愛川さんのケースも加味すれば参考になるでしょう。
特に前立腺がんと甲状腺がんでは、「治療なし」がモノをいいます。前立腺がんは悪性度が低いタイプが少なくなく、ガイドラインにも治療せず経過観察する「監視療法」が明記されているほど。1センチ以下の甲状腺がんも同様の考え方があります。そういう微小な甲状腺がんでリンパ節を取っても取らなくても再発率が変わらないことが分かっています。そして、「迷ったら積極的な方法をとらない」が医療の原則だと思っています。全ての治療にはマイナスの面もあるからです。
[私見]元々ヒト(というか生き物には)、生体恒常性[homeostasis]という機能が備わっていて、正常に生きる、病気になっても、元の状態に戻すという働きを持っているのです。がん三大治療と言われるものも、この生体恒常性に対して、マイナスに働くということも考えなければなりません。がんになっているんだから、三大治療も「止むを得ない」というかも知れませんが、特に高齢者は、三大治療そのものが、体に対する負担が大きく、がんを治療する前に、参ってしまうという事も充分あり得ます。治療をした場合と、しなかった場合を比較すると、結局しなかった方が長く生きられたというケースがあり得ます。
抗がん剤についての()内の表記は私見です。
中川恵一氏profile
東大医学部附属病院放射線科准教授
1960年生まれ。東大医学部医学科卒業。同院緩和ケア診療部長を兼務。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。
記事・画像 引用・参考元 日刊ゲンダイ <ヘルスケア>
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