余りに甘すぎる年金の制度設計!我々の老後生活の頼りになるのか!?
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、資産運用比率の見直しを発表した。GPIFは日本の国民年金、厚生年金の年金積立金を管理・運用している政府系金融機関(所管は厚生労働省)。運用資産約130兆円という世界最大級の年金基金だ。
これまでのGPIFの基本ポートフォリオは債券71%(国内60%、外国11%)、株式24%(国内12%、外国12%)、短期資産5%だった。つまり日本国債に偏っていたわけだが、これを35%程度に減らして国内外の株式や外国債の比率を高め、債券50%(国内35%、外国15%)、株式50%(国内25%、外国25%)の運用比率にしようというのだ。
勘違いしてはいけないのは、国民のために少しでも年金の運用効率を高めようという発想から運用比率が見直される訳ではない。そもそも年金についてマジメに考えている政治家や役人は過去にもそして現在も皆無と思った方が現実を言い当てている。
2000年頃に、国の年金政策に関わっている学者が言ったこと。当時からとんでもないことを言っていた。4%の経済成長が持続して、サラリーマンの定期昇給も年4%、少子化に歯止めが掛かって出生率が2.0まで回復する――。そういう前提のうえで5%の運用利回りが確保できれば年金が回るように制度設計していると胸を張っていた。
1990年代の経済状況の推移や少子化の進展具合から考えて、余りにも想定が甘すぎる。これでは国民を欺くようなもので、本気で年金制度を維持するなら支給年齢を引き上げて、支給額を減らし、保険料を高くするしかない。そう指摘されると、「そこはいじりたくない」という見解だった、結局、失われた20年を経た今も日本経済は低成長、もしくはマイナス成長に喘ぎ、定期昇給は昔話になった。出生率は子供2人など夢のまた夢の1.41。年金資産の実質的な運用利回りは1.7%程度だ。(まあそう言って年金破綻を覆い隠したといった方が事実に近い)
前提が全部間違っているのだから、制度が成り立つ訳がない。一昔前に5000万件の年金記録の記載漏れが発覚して「消えた年金記録」と大騒ぎになったが、年金制度の破綻を問われたくない役人からすれば、年金記録はもっと消えて欲しいとというのが本音だろう。公務員には恵まれた共済年金があるし、政治家にも手厚い議員年金がある。こちらは株式や外債の運用比率を増やすとは言っていない。下々の年金問題なんて端から眼中にないのだ。
一方、勤労者の代表たる組合は年金問題をもっと突き上げるべきだ。しかし総評系などは大企業の組合ばかりで、大企業は企業年金が充実している。要するに国民年金を貰う人たちを代表する組合がないのである。
本当なら国民の代表である国会議員の役回りだが、年金問題に熱心な政治家は殆どいないから、財務省や厚生労働省の小難しい説明に簡単に騙されてしまう。若い現役世代は自分が支払った保険料分の年金を将来的に貰えないのは残念乍ら本当である。年金問題は何も解決しない、という構造になっている。
【老後のお金サバイバル術】
結論を言えば、老後の資金は自分で準備するしかない。政治家や役人が牛耳って、政策の失敗を誤魔化すために株を買い込ませたり、外債を抱え込ませる年金ファンドに虎の子を預けるのは止めた方がいい。地雷を踏んで一発で「飛んでしまう!危険性」がある。
国任せにしないで、年金は自衛すべきという結論にならざるを得ないのではないか!「年金は社会保障」と決めつけて公的年金制度に依存するリスクは、日本の債務状況と人口減時代の進行を考えれば、今後、確実に高まってくる。
アメリカ最大の年金基金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)や、シンガポールの政府投資公社(GIC)、ノルウェーの政府年金基金(グローバル)など、厳正中立な運用で長期にわたって安定したパフォーマンスを上げている年金ファンドが世界にはある。たとえばオンタリオ州などカナダの州政府が持っている年金ファンドは地道な投資研究で高利回りを堅持していて、インセンティブシステムが強すぎるアメリカのファンドよりもはるかに信頼できる。
そうしたファンドに分散して運用を任せられれば一番いいのだが、日本人の年金は預かって貰えない。今のところ、日本で集めた資金をまとめて海外の年金ファンドに預ける商売をしている金融機関もない。ただし、大概のファンドは運用状況を公開しているので、追いかけて投資しようと思えば日本の機関投資家にもできないことはない。
国債暴落→財政破綻→ハイパーインフレのような究極のディザスターが起こった場合、たとえ年金が貰えたとしても意味がない。月額20万円貰えたとしても、円の価値が10分の1に暴落していれば、今の2万円にしかならない。ロシアなどの例から見てもハイパーインフレが起きた国では年金受給者が一番先に地獄を見るのだ。貯金も10分の1になるから、これも役に立たない。
年金や貯金があるから安心、という発想では絶対に生き残れない時代に日本は突入していく。「そうではないもの」に資産をシフトしていかなければならない。たとえばキャッシュを生み出す収益性の高い土地や生活必需品関連の株などは国債が暴落しても、それほど価値が下がらない。それから外貨。本当は何があってもひっくり返らない国の外貨がいいのだが、そんな国はないので、なるべく資源国で財政規律のいい国の通貨を選ぶ。
米ドルとユーロをベースにして、カナダドルや豪ドル、ノルウェーのクローネなど、自分で将来性があると見立てた途上国を含めて5種類ぐらいに配分して外貨預金をするのがベストだ。ゼロから始めるなら、給料の半分を外貨預金に充てるくらいの気持ちでなければ間に合わない。
一方で、自分自身への投資も怠らない。どんな時代でも、どんな場所でも稼げるスキルを身に付けることがハイパーインフレ下における究極のサバイバル術なのである。
引用・参考元http://president.jp/articles/-/14114?page=2 大前研一氏コラム。
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