治りにくい咳(肺非結核性抗酸菌症)、中高年で急増中、ご注意!

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治りにくい咳(肺非結核性抗酸菌症)、中高年で急増中、ご注意!

 

結核菌に似た細菌が引き起こす肺の感染症が中高年の女性を中心に急増中だという。増加の理由は未だわかっていないが、1年間に新たに診断される患者の割合は肺結核を凌ぐ勢いという。人から人へは移らないものの、長引く咳(せき)やたんに悩まされ、体重も次第に落ちてくる。抗菌薬などで治療しても完全によくなることが難しく、中々厄介な病気だ。

 

肺非結核性抗酸菌症は、結核菌と、らい菌以外の抗酸菌によって起きる慢性の呼吸器疾患だ。病原性の抗酸菌は数十種類あり、日本ではこのうち「マイコバクテリウム・アビウム」と「マイコバクテリウム・イントラセルラーレ」という菌による肺MAC症が、肺非結核性抗酸菌症の9割近くを占める。

 

「初期は無症状のことが多い。健康診断で胸部レントゲンに影があり、精密検査を受けてわかるケースが増えている」という。精密検査でCTを撮ると、肺に空洞や気管支拡張の病変が見つかる。更に、たんなどの検査をして菌が見つかれば、肺非結核性抗酸菌症と診断される。

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慶応義塾大学病院の長谷川直樹教授らのグループが6月にまとめた調査で、肺非結核性抗酸菌症に罹る患者の割合が急増していることがわかった。07年に調査したときの2.6倍に増え、肺結核の罹患(りかん)率を上回った。最も難治性のタイプは同約5倍に増えていた。

 

研究グループは14年、884の医療機関にアンケート調査をした。肺非結核性抗酸菌症にかかる人の割合は10万人当たり14.7人だった。一方、菌が確認された肺結核患者の割合は同10.2人だった。

 

患者数が急増しているのは、高齢化で罹り易い人が増えたことや診断精度の向上などが考えられるが、はっきりとした理由は分からないという。

 

病気の進行は人によって異なる。「通常は20年から30年かけてゆっくりと症状が悪化するが、まれに数年で急激に悪くなるケースもある」という。病気が酷くなると死亡することもある。死亡者数は最近20年間でおよそ6倍に増加しており、2014年には1300人を超えたという。「もはや珍しい病気ではない。将来は結核の死亡者数を抜くと予想される」と指摘する医師もいる。

 

治療はクラリスロマイシンとリファンピシン、エタンブトールという3種類の抗菌薬を併用するのが基本になる。抗菌薬が効かない場合は、空洞や気管支拡張病変を手術で取り除くこともある。ただ、一旦菌が消えても再発するケースもあり、定期的に診察を受ける必要がある。特殊なケースを除けば、治療薬が効く結核よりも、やっかいな病気ともいえる。

 

このため、新しい治療薬の開発を急ぐ必要がある。現在、通常の治療では菌が消えない患者を対象に「リポソーマル・アミカシン」という吸入剤の臨床試験(治験)が進んでいる。このほか、「ソリスロマイシン」という抗菌薬が出てきた。「この薬の治験は肺炎や気管支炎を対象にしているが、肺非結核性抗酸菌症にも効果があるかもしれない」と期待する向きもある。

 

また、「どのような人が感染しやすいかの研究」を進めている医師もおり、感染しやすい人のタイプが詳しくわかれば、治療薬の開発にも役立つと期待される。

 

肺非結核性抗酸菌は水や土壌中など環境中のどこにでもいる。土埃や水蒸気に含まれる菌を吸い込んで、この病気にかかったと推定される。土埃を週2回以上浴びる仕事に就く患者のたんに含まれていた菌と、仕事場の土にいた菌の遺伝子型が一致したケースや、浴槽にある出水口などにいた菌が患者の菌と同じだった例などが報告されている。

 

対策としては、「風呂場を乾燥させて、カビが生えにくい環境にすることが大切。薬が効いて良くなった人は、新たな菌を吸い込まないように家庭菜園などは避けた方がよい」とアドバイスする。

◇     ◇

■罹患率 日本が突出 治療薬の開発急務

肺非結核性抗酸菌症は結核と違って人から人へうつる病気でないため、結核のような登録制度がない。このため、正確な罹患率を把握するが難しく、罹患者の数も凡その数字だ。

 

罹患率は1970年ごろから国立療養所非定型抗酸菌症共同研究班などが疫学調査をしてきた。罹患率が10万人当たり2人を超えたのが1984年。2001年の調査で罹患率は同5.9人となった。次に調査が実施されたのは07年の同5.7人だった。

 

その後、菌の検査法や画像など診断技術が進歩した。08年には日本呼吸器学会などが診断ガイドラインを作成した。14年はガイドライン作成後、初の調査となった。この病気は海外でも増加傾向にあるが、日本は突出して多い。

 

死亡者数も年々増加する傾向にある。将来、結核の死亡者数(年間約2100人)を上回ると予想されている。専門家の間では、結核のように肺非結核性抗酸菌症の罹患率の把握を求める声が多い。

 

引用・参考元 2016/9/25付 日本経済新聞

治りにくい咳、中高年で急増 肺非結核性抗酸菌症 - 日本経済新聞
結核菌に似た細菌が引き起こす肺の感染症が中高年の女性を中心に急増している。増加の理由はわかっていないが、1年間に新たに診断される患者の割合は肺結核をしのぐ勢いという。結核のように人から人へはうつらないものの、長引く咳(せき)やたんに悩まされ...

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