彩色師1人前と言われるまでに20年 日光東照宮の竜の絵を残す
今年12月、ユネスコ無形文化遺産に登録された「鹿沼今宮神社祭の屋台行事」。彫刻やタイの制作・修理に携わった職人のひとりが「彩色師」の澤田了司さん(67)。今年、高円宮殿下記念地域伝統芸能賞支援賞を受賞した。「家族から、仕事は繊細なのに日常作業は不器用だと言われます」とそのギャップを笑われている。
中学時代から独学で絵を描き、高卒後、1970年から文化財保存会の一員として、日光東照宮をはじめとする栃木の文化財の修復作業に携わってきた。現在、彩色師は5人、漆塗り師は6人いる。
「71年、天井画の復元作業で竜の絵を描く仕事に関わり、一生の仕事にしたいと思いました。日本絵は線が繊細で、例えば鳥の絵を描くにも羽の一本一本に神経を集中させる。昔は今ほど、遊びもなかったから、仕事一筋だったでしょう。400年前の先人は集中力が違う。その差を感じます。江戸の職人さんたちの意思や当時の文化などをイメージし、再現していますね。一人前と言われるまでにゆうに20年は掛かります」
職人歴45年の匠は、90年から98年にかけて、鹿沼市をはじめ県内で15台の彫刻屋台も手掛けてきた。先の鹿沼今宮神社祭の屋台行事の屋台だ。
「1台に1~3年は掛かります。日中は日光東照宮などの修繕作業に携わり、夜や土日に彫刻屋台の作業をしていました。家族はどこにも連れていけなかったですね。息子たちは別の仕事に就いてしまったけど、孫が継いでくれたら嬉しいですね。文化遺産に認定されたことで、家族も『あの時の苦労が報われた』と喜んでくれています」
彩色師の仕事は、主に国の補助金事業のため、工期は3月締め。1、2月の寒い時季に、追い込みとなる。日光東照宮陽明門は18年3月末まで大修理中だ。
「文化財ですから火を使えない。日光の寒さは厳しくて、辞めていく職人もいます。建物の修理の完成に立ち会えるのが気持ち良くて、ずっと続けてきました。50年後にまた、修理する職人さんに恥じないよう丁寧な仕事をしたいと思っています」
引用元 nikkan-gendai[articles/view/life]
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