<噛む力>を軽視してはいけない!咀嚼力の低下が日本人をダメにする~明らかになった肥満や生活習慣病との関係
昔は親が子どもに対して口うるさく「ご飯はよく噛んで食べなさい」と言ったものだ。ところが現在の食べ物が柔らかいものばかりで、噛む力を要しないものばかり。 噛まないというより「噛まなくても済む」食べものばかりになってしまった。したがって<噛まない>日本人ばかりになった。というより噛む必要がなくなった。グルメ番組のレポートでも、柔らかい食感は「おいしいさの判定」を大きく左右するほどだ。
この<噛まない>習慣の蔓延に、警鐘を鳴らす専門家は少なくない。
当然、食事での咀嚼回数が減れば<噛む力>は弱くなる。噛む力の低下は、歯並びの乱れや「顎関節症」の原因のひとつにもなる。また、「口呼吸」を招き、免疫力や認知機能の低下など健康にさまざまな悪影響を及ぼす。
■世界初<噛めないとメタボに>が判明■
噛む力の低下とメタボリックシンドロームとの間に明らかな関係性がある――。
そんな新たな知見が、世界で初めて明らかにされた。新潟大学、大阪大学、国立循環器病研究センターの共同研究グループが、歯学誌『Journal of Dentistry』(10月25日発行・電子版)に発表したものだ。
メタボリックシンドロームは、「内臓脂肪型」の肥満に高血糖・高血圧・脂質異常などの危険因子が2つ以上重なった状態を指す。腹囲も診断基準となり、男性は85cm以上、女性は90cm以上が目安になる。
もちろん、メタボは見た目の問題だけではなく、生活習慣病の危険を示すサインだ。脳卒中や心筋梗塞、糖尿病など、死に関わる疾患が発症するリスクが高まる。そして、近年の医学界では、口腔健康とメタボとの関係が注目されている。
研究グループは、大阪府吹田市に住む50~70代の住民1708人を対象に基本健診と歯科検診を実施。どれくらい効率よく咀嚼ができているかを調べるため、専用に開発したグミゼリーを30回噛んでもらい、増えた表面積を算出した。
そのうえで年齢や性別、飲酒、喫煙、歯周病などの影響を除いて解析。噛む力とメタボとの関連性を調べた。
対象者を噛む力の強さによって4つのグループに分けて比較したところ、対象者全体では、噛む力が最も強かったグループに比べて、下から2番目に弱いグループでは、メタボ率が1.46 倍高い結果になった。
また、70代では噛む力が最も強いグループに比べて、それより弱いグループでは1.67~1.90倍メタボ率が高いことが分かった。その結果、噛む力の低下とメタボとの間には、明らかな関係性があると結論づけられた。
研究グループは「噛む力を測ることで、将来的にメタボリックシンドロームになるリスクが評価できる可能性が示された」とコメント。脳卒中や心筋梗塞などの「動脈硬化性疾患」の予防において、新しい医科歯科連携の戦略につながることが期待されるという。
■「噛む」と基礎代謝がアップ、ダイエットにも効果が■
3年前には、京都大学が滋賀県長浜市の住民約6800人を対象として行ったコホート研究から、<よく噛んで食べることが2型糖尿病の発症リスクと関連がある>ことが明らかになっている。噛む能力がもっとも高いグループでは、もっとも低いグループに比べて、2型糖尿病リスクがほぼ半減するという。… このように「噛む」ことが生活習慣病のリスクを下げるのは、いくつもの研究から明らかだ。日本肥満学会の「肥満症治療ガイドライン」では、行動療法のひとつとして「咀嚼法」が挙げられており、<1口30回噛む>ことが推奨されている。
咀嚼には、満腹中枢を刺激して食欲を抑える効果がある。さらに、よく噛んでゆっくり食べる方が、食後のエネルギー消費量「食事誘発性体熱産生」を増加させることもわかっている。 「食事誘発性体熱産生」とは、食後に起こる栄養素の消化・吸収によって生じる代謝に伴うエネルギー消費量の増加で、基礎代謝量の1割程度を占める。時間をかけてゆっくり食事をすることは、ダイエットにも効果的なのだ。
毎日の食事で噛む回数を増やすコツは、「ひと口の量を少なめにする」「できるだけ歯応えのある食材を選ぶ」「味付けは薄味にする」「食材は大きく、厚めに切る」などがある。
最初から一口30回噛むのが難しければ、いつもより5回余計に噛むことから始めてみよう。咀嚼力のアップに努めて、「健康寿命」を延ばしてもらいたい。
余談だが、小生は「ガム屋」に就職した。新入社員研修会では、第1に「咀嚼」について講義を受ける。咀嚼は、上記のようにメタボばかりではなく、生体の健康維持・向上に大きな影響を及ぼす。今の食品は「あまり噛む必要がない柔らかい食品」ばかりになっているので、今の子供は咀嚼力が落ちている。江戸の将軍は、食べものも手を加え、柔らかいものしか出されなかったから、歴代顎が細い顔つきになった。所謂「しょうゆ顔」だ。現在の子供は、このしょうゆ顔ばかりになった。昔は顎が角ばった「下駄」みたいな顔つきが多かったものだ。(またまた余談だが、顎が細くなったが、歯は昔通りの本数が生えてくる。したがって乱杭歯になる)「8020運動」というものが提唱されている。80歳になっても、自歯を20本は確保しようという運動である。歯を確保し、よく噛んで食べることが出来ることが、元気な老後を過ごせることに繋がる。(咀嚼について大分端折ってしまったがまた掲載するように致します)
引用・参考元 Excite News <HealthPress(文=編集部)>
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