頻発する高齢者の自動車事故…弁護士が語る「道交法」の高齢者対策に潜む矛盾点

 

高齢の運転者による自動車事故が相次いでいる。10月28日には神奈川県横浜市で87歳の男性が運転する軽トラが、小学生の集団登校の列に突っ込んむ事故が発生。11月12日には東京都立川市の病院の駐車場でも、83歳の女性が運転する乗用車が男女2人を死亡させる事故が起きた。

 

認知症の検査義務や、免許証自主返納の際に各自治体で企業や団体からの特典をつけたりといった施策もスタートしていますが、なかなか効果はあげられていないのが現状のようだ。そこで、現在の「道路交通法」が抱えている問題点を振り替えるとともに、来年3月に施行が予定されている改正内容のポイントを解説したい。

 

1.「道路交通法」の本来の目的とは

 

道路交通法は、道路での危険を防止し、交通が安全かつスムーズになるようにし、道路での交通が原因となるトラブルを防止するために定められている法律です。

 

高齢の運転者が自動車を運転することによって生じる危険を防止するためのルールもこの道路交通法で定められおり、高齢運転者による痛ましい事件が世間で起き続けているためか、年を追うごとに厳しく追加・改正されています。

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2.現行の高齢運転者対策の問題点

 

現行の高齢運転者対策は、75歳以上の高齢運転者について、運転免許の更新の際に認知機能検査を行って、認知機能の程度に応じて2時間30分の高齢者講習を受けてもらうというものです。現行法ですと、認知機能検査の結果、仮に認知症の恐れありと判断されても、信号無視などの一定の違反行為をしない限り、医師の診断を受けさせられることもないし、免許が取り消されたり停止されることもなく運転できることになります。また、認知機能検査は運転免許更新時だけですので、次回免許を更新する時まで3年間位何事もなければ運転できることになります。

 

3.近く強化が予定されている高齢運転者対策

 

来年、平成29年3月12日から改正道路交通法が施行されますが、以下の点で高齢運転者対策が強化されています。

 

①認知機能検査の実施時期

 

免許更新時だけでなく、信号無視や逆走といった一定の交通違反を犯した場合についても実施されることになりました(臨時認知機能検査)。

 

認知機能の低下が伺われるような事情がある場合にも検査を実施することによって、高齢運転者の認知機能の低下を早期に発見し、認知機能低下による事故を未然に防ぐためです。

 

②認知症の恐れがある高齢者は医師の診断書の提出が義務化

 

認知機能検査の結果、認知症の恐れがありとされた高齢者は、臨時適性検査を受けるか医師の診断書を提出しなければならず、医師の診断で認知症と判断された場合、免許が取り消されたり停止されたりすることになりました。

 

これは、認知症の高齢者を早期に発見し、認知症の高齢者による事故を未然に防ぐためです。これまでは認知症の恐れがあるだけでは医師の診断が義務付られているわけではありませんでした。

 

③高齢者講習の内容を充実

 

免許更新の際の高齢者講習について、認知症の恐れがある高齢者や認知機能が低下している恐れがある高齢者には個別指導1時間を加えた計3時間の高齢者講習(高度化講習)を実施し、認知機能が低下している恐れのない高齢者については計2時間の高齢者講習(合理化講習)を実施することになりました。

 

高齢者講習の合理化になります。認知症の恐れがある人や認知機能の低下の恐れがある人への個別指導を行うことによって、事故を未然に防ぐためです。

 

以上のように、来年さらに高齢運転者対策が強化されるわけですが、これでも高齢運転者による事故が完全に防げるとも思えません。今後、高齢者が増えていくことを考えると、高齢者の運転の自由に対する不当な制約にならないように配慮する必要はありますが、抜本的な対策を早期に実施して欲しいところです。

 

*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)

 

引用・参考元 Excite News <   >

https://lmedia.jp/2016/11/17/71534/

画像引用 *Graphs / PIXTA(ピクスタ