安倍3選確実といわれる総裁選!我々には投票権はないが今国民が問われていること!
五木寛之さんが名付け親だという「全日本こころの歌謡選手権大会」を聴きに江戸川区総合文化センターに行ってきた。プロ、アマチュア22人の歌手。テレビで見かける歌手も顔色なしと思える歌唱力は、長時間、退屈させぬ熱唱揃いだった。海上自衛隊東京音楽隊の演奏も見事だった。ところが楽団が最後に演奏した曲が、「軍艦行進曲」だった。「守るも攻めるも黒鉄の浮かべる城ぞ頼みなる……」の嘗ての軍国主義を思い出してしまい、折角の歌謡大会の興奮も冷めてしまった。
この日は8月5日。翌6日は、広島に原爆が投下され、14万有余の命が奪われた日だった。職務上いつも演奏しているのかも知れないが、“鎮魂の8月”(沖縄は6月)には、配慮があってしかるべきだ。せっかくの素晴らしい歌謡大会の最後に不快な思いが残った。
翌日と9日に広島、長崎で開かれた平和式典で安倍晋三首相は、「核兵器のない世界の実現」と言及しながら、「核兵器禁止条約」に参加しないことを改めて明言した。世界で唯一の被爆国日本が、核兵器廃絶に背を向ける異様な事態を続けている。これは日本政府が、核の威嚇を常套手段とするアメリカの言いなりなっているからに他ならない。
15日は、73回目の「終戦の日」を迎える。マスメディアでは、「8・15」前後に集中的に戦争をテーマにした記事や番組を報道することが慣例化していて、「8月ジャーナリズム」と呼ばれている。今年も、NHKでは6日にドラマ「夕凪の街 桜の国2018」、NHKスペシャル「広島 残された問い 被爆二世たちの戦後」などを放送したが、15日までに民放も含めて、戦後検証ドキュメンタリーなどが放映される。
一方、新聞各紙も戦争を語り継ぐ人々が、鬼籍に入っていく中で、証言の掘り起こしに取り組んでいる。これは戦争に鈍感になっている日本人に、過去の悲惨な歴史と平和の尊さを再認識させる意味で、大いに意義がある。
戦争と戦争の間の時期を「戦間期」と呼ぶ。ただし歴史の上では、第1次世界大戦の終結から第2次大戦の勃発までの約20年間を指し、「20年間の休戦」とも呼ばれる。日本では、明治維新から今年で150年だが、日清戦争、日露戦争、日中戦争、太平洋戦争……と平和な時代は長続きしなかった。それが今年で73年間も、まがりなりにも平和な時代が続いている。安倍首相の口先ばかりの「平和」の裏には、安全保障関連法という名の戦争法あり、防衛費の増大ありと、何でもありの傍若無人政治が横行している。
沖縄では今も戦争に巻き込まれる脅威にさらされ続けている。辺野古移設反対運動の象徴とも言える翁長雄志知事を失った痛手は大きい。彼の遺志を継ぎ、平和な日本を守り続ける為にも、日本の「戦間期」を永続的に延ばしていくしかない。安倍3選確実といわれる9月の自民党総裁選。一党の総裁を決める丈ではない。実質的にこの国の総理を選ぶことであり、自民党国会議員、党員の動向に注視し、私たちが来る選挙でどういう投票行動をとるのかが問われる時である。政治状況を注視し、この国の行方を考えるべき時だ。無関心であってはいけない。
【小俣一平プロフィール】
1952年生まれ。武蔵野大学客員教授、元社会部記者。疑獄事件からトイレ探検までフィールドは硬軟無限大。老人力同盟事務局長。著書は「新聞・テレビは信頼を取り戻せるか」「無念は力」「ロッキード秘録」「消えた警官」「『トイレ探検隊』がゆく!」など。
記事・画像 引用・参考元 日刊ゲンダイ 【小俣一平】
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