総裁が「党の正式な改憲草案を自ら潰す」という、何が何だかさっぱり解らんという「クーデター狂騒曲」!総裁ご乱心!
9月の自民党総裁選に向けて、安倍晋三首相が改憲を争点にしたいと表明し、それに対抗馬の石破茂元幹事長は慎重な姿勢を示している。一見すると、安倍が強気の攻勢に出て、石破が受け身に回っているかの様に見えるが、実は全く逆だ、と「ベテラン与党議員」が次のように解説する。
■総裁が急遽言っている憲法改正案はこう読む!■
「本来、争点でないものを争点であるかに仕立てて、「勝ったフリ」をするというのは安倍の常套手段で、これもそのひとつ。安倍の案は、周知のように、第9条に自衛隊の存在を明記する第3項を付け加えるというもので、これを安倍は昨年5月に「私案として一方的に発表」し、後に自民党の改憲推進本部に文書として纏めさせたものの、党としての機関決定に持ち込んではいない。要するに未だ私案の儘だ。
それに対して、石破は戦力不保持と交戦権放棄を謳った第2項を削除する案だが、これは野党時代の2012年に同党が決定し正式に発表した改憲草案に沿った主張。それを安倍の取り巻き連中が『どちらを党の方針とするか、決着を付ける』などと言い回っているのは、筋がネジレているおかしな主張ということになる。謂わば総裁が私案を掲げて党の正式の草案を潰そうという話で、手続き的に「デタラメな一種のクーデター」ということになる」幾ら総裁といえども、こんな出鱈目は許されるものではない。
本来なら、まずじっくりと党内で、議論を深めて、12年草案を取り下げるなり、大幅修正を加えるなりして、全党打って一丸、公明党の理解も取り付けた上で、改憲運動に突き進むという事でなければ筋が通らない。それを、党の草案をまるで石破の私案であるかに言って架空の争点を仕立てて勝ったフリをしようというのは余りに姑息で、国会と国民をバカにする事である。(何でもかんでもフリで、実際に動くことはない)
■何故こんな事が起きるのか!総裁選を前に思惑外れで焦りがあるのではないか!?■
「こんなやり方になるのは、安倍が焦っている証拠。実を言うと、彼には内閣の最長不倒記録を達成して、20年五輪に総理として列席するという以外にもう目標がない。改憲は確かに宿願ではあるが、仮に秋の臨時国会で審議が始まっても、発議は早くて来春の通常国会。ところが来年は改元の年で春から秋まで大事な行事がいろいろあるし、国民もいま直ぐに改憲しなくては困る等と誰も思っていない。改憲を押し通すことなど、実際には不可能だと、安倍も自分で分かっている筈だ」とベテラン議員は言う。
何とも迷惑千万な安倍の疑似改憲騒動である。
(私見)
総裁選も未だに正式出馬をしていない。普通に考えれば、一刻も早く出馬宣言をして、自らの主張を大いにアピールするのが当たり前の考えだ。昨日当たりの安倍首相の発言だと、「総裁選は謂わばクローズドの選挙で、(一般)国民は投票出来ないのだから、論戦をして、政策を訴える必要がない」等と、またしても「トンデモ発言」を放った! 総裁選は確かに自民党内の選挙だが、制度上「総理大臣」を決める選挙でもあり、国民にも大いに関心のある選挙である。立候補者は、国民に自分の政策を大いにアピールして当然だ。未だ正式な出馬宣言もせず、対立候補が論戦を望んでいるのに、頑なに回避している。今出馬宣言をすると、石破元幹事長との論戦に臨まなければならない為、意識的に出馬の意思を伸ばしているという話さえ、永田町で実しやかに囁かれているという。
高野孟(ジャーナリスト)プロフィール
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。
記事・画像 引用・参考元 日刊ゲンダイ (高野孟執筆)
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