老後破産:高齢者世帯の約4割! 多くの人が逃げられない「老後破産」、原因と対策は?
停年を迎えてリタイヤしたら、好きなことをしながら穏やかに悠々自適に過ごしたい――。こう考えている中高年サラリーマンは多いだろう。ところが、そんなささやかな希望でさえ、高齢者世帯の実に半数近くが実現できていないという。高齢者が、生活保護基準より低い収入で生活している「老後破産」状態にあるというのだ。
高齢者が老後破産状態に陥る原因は大きく四つあるという。それは、
(1)年金が生活費より少ない、
(2)医療費の使い過ぎ、
(3)子供の借金の返済を負担、
(4)定年を過ぎても住宅ローンが残っている
である。
【中年期を迎えてからの思わぬ収入減が最大要因】
「年金が生活費より少ない? それならば貯蓄をしておけばよかった話だろう。何故しなかったのか」、こう叫ぶ人もいるかも知れない。だが、それが口で言うほど簡単にできたなら、多くの高齢者世帯が老後破産状態には陥っていない。誰も好きこのんで破産状態になどなりたくない。そこにはそれなりの理由があるのだ。
実際に、老後資金が充分に貯められず「非常に不安」だと考えている“老後難民”予備軍の多くは平均的なサラリーマンであり、いわゆる「中流家庭」である。貯蓄もそれなりにはしている。にもかかわらず、老後の資金が見込み違いとなる最大の要因は、「特に男性の、中年期を迎えてからの思わぬ収入減」にあるという。
男性雇用者の給与は、1997年の「577万円」をピークに15年間下がり続け、リーマン・ショック後の2009年には「499.7万円」とついに500万円を割り込んだ。その後上昇に転じ、少し持ち直したものの、2013年時点でも511.3万円。やはり以前と比べればずっと低水準にとどまっている(国税庁「平成25年民間給与実態統計調査結果」より)
社会人となったばかりのころには想像もしなかった大幅な収入ダウンによって「落ちていく」感覚、どこで「下げ止まるか見えない」不安。これが、日本人の中流層の足元を脅かしている。
【三つの対策で老後破産を防ぐ】
もう一つ、子供の教育費の自己負担額が大きいことも大きな「見込み違い」を生み、老後破産の道へとつながっているという。例えば、大学生の子を持つ親の家計を見ると、「教育費」が約4分の1を占めている。子供が複数いる家庭だったり、学費が高い私立大学に多く進んだりすれば、親の負担はどんどん増える。
さらに、最近では子供の教育に熱心なあまり、家計が中長期的に破綻しかねないレベルまで教育費が膨らむ家庭が増えているという。世帯収入が1000万円を超えている家庭でも、エスカレートすると簡単に家計が実質破綻状態に陥るというから注が必要だ。しかも、それにより実際に困るのは、相当先に訪れる自分たちの老後なのだからやっかいである。
では具体的に、悲惨な老後破産状態に陥るのを避けるにはどうすればいいのか。「三つの対策」を紹介する。
(1)住宅ローンを退職するまでに払い終える計画を立てる、
(2)退職するまでに、老後生活に必要な金額を貯蓄する、
(3)老後は年金+貯蓄の範囲内で生活する。
これらの対策を実践したうえで、なお捻出できるお金の中から教育費なりその他のお金を出すことを心がければ、破綻する確率を大きく下げられる。
家計の中で、教育費や衣食住費、お小遣いその他子どもに関連する費用の総支出に占める割合を指す言葉として「エンジェル係数」という造語がある。ある統計によれば、子ども2人世帯のエンジェル係数は平均29.5%、年収500万円~700万円世帯では平均26.3%という調査結果が得られているという。つまり、家計支出のうち3割弱が子どもに関係する費用になっている。
このエンジェル係数には二つの特徴がある。一つは、どんなに切り詰めても、固定費である学校教育費や一定水準の生活費は低くならないこと。もう一つは、固定費に上乗せされるその他費用は変動費的色合いが濃く、「子の金銭感覚に大きく影響されやすい」点だ。例えば、「月決めの定額制ではない小遣い」「子どもの使用する通信費」などが挙げられるという。
このため、早くから金銭感覚を養うことが「家計のスリム化」に少なからず貢献し、逆にこのことが家族の絆を深めるのに大切な出費に回せることにも繋がる。さらに、自分たちが老後も家計収支と資産を把握し、定期的に中長期ビジョンのシミュレーションを行うためにも金銭教育の知識が役立つと付け加える。公的年金だけで不足する老後資金は平均1500万~4500万円
上記三つの対策の2番目で、「退職するまでに、老後生活に必要な金額を貯蓄する」と言われても、いったいどれくらい貯めればいいのか。その前に、そもそも同世代の他の人たちが、どれくらい貯めているのかが気になる人も多いだろう。
金融広報中央委員会が発表した「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 平成24年調査結果」によると、単身世帯の平均的な貯金額は、20代が「平均342万円、中央値129万円」30代では「平均732万円、中央値350万円」、40代になると「平均1153万円、中央値600万円」だという。こうしたデータから「60歳までに2000万円貯めたいならば、40歳の折り返し地点で半分の1000万円近くを貯めておくと安心です」と目安を示している。
まず65歳から90歳までの老後に必要な二人分の生活資金として、「月当たり約28万円で、25年間で合計約8400万円」という数字が出ている。一方、収入としての年金額は、厚生年金の夫と国民年金の妻の夫婦二人で、夫が平均的な給与をもらっていた場合は月23万1648円。年金総額は25年で「約6900万円」となる。夫婦二人が国民年金の場合は、一人満額で月6万5741円(二人で13万1482円)。年金総額は「約3900万円」である(厚生労働省 平成23年のデータ)。
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つまり、公的年金だけでは不足する老後資金は、夫が厚生年金、妻が国民年金の場合で「1500万円」、夫婦二人が国民年金の場合は「4500万円」となる。
なるべく早い時期に、こうしたお金の計算をして、「100歳まで生きても大丈夫なように、ひと月で取り崩すことができる金額を算出する」ことを勧めている。また、病気や介護、ケガをしたときの臨時出費について、「病気やケガに対して300万円程度、介護に対しても300万円程度は準備しておきたい」という目安も示している。
【自宅を担保にお金を借りる「リバースモーゲージ」も検討】
ただし、いくら注意して生活していても、貯蓄を使い果たし、日々の生活が成り立たなくなる可能性は常にある。そうした場合に検討すべき仕組みが、自宅を担保にしてお金を借りる「リバースモーゲージ」だ。「モーゲージ」は「住宅ローン」を指す言葉。これのリバース(逆)ということで、通常の住宅ローンが最初にお金を一括で借りて月々返済していくのに対して、リバースモーゲージでは月々お金を借りて、最後に一括で返済する形をとる。
⇒ あなたの老後は、確実に「資金不足」――その現実に対抗する「リバースモーゲージ」は救世主か?
上記のように書くと、リバースモーゲージは「切羽詰まったときの最終手段」と思えるかもしれないが、そうではない。通常の住宅ローンが組めない高年齢になってから新たにマイホームを購入したり、生活を豊かにするためのお金を作ったりするための手段として、積極的に同制度を活用する道もある。
ただし、リバースモーゲージは誰でも無条件で利用できるわけではない。
・一定の年齢以上であること(概ね55歳~60歳。上限は80歳以下)
・年金収入など長期的に安定した収入があること
・金融機関の定める地域内の戸建住宅やマンションを担保とすること
・借入金の使途は、生活資金や住宅の建設・購入・改築資金であること
・融資可能額は所定金額以上&土地・建物の担保評価基準の一定範囲内
などの制約がある点に注意が必要だ。また、借入利息の返済方法も、金融機関によって様々である。
老後資金を狙う詐欺師に注意
その他、家計の収支悪化の際に、資産を枯渇から回避するためのテクニックは、奇をてらわず、「収支の悪化抑止」による貯蓄の取り崩しの軽減と、「資産の最適配分」に頼るしかないという。
収支の悪化抑止策としては、「支出を減らす」か「収入を増やす」ことに尽きるといい、家計の支出削減を検討する場合には「変動費」に注目すべきだ。支出の総額は「頻度」と「単価」で決まるが、単価を落とさず頻度を減らす、つまり買い物や外食、旅行などの回数を減らす代わりに質は落とさない「一点豪華主義の発想」といったテクニックを学ぼう。
老後破産に陥らないために、できることは何でもやるべきだ。例えばその一つに「保険の見直し」がある。保険の見直しにより、家計がグッと楽になるようなケースもきっとあるだろう。
最後に、折角貯めた資金、節約して守って来た生活費など、一瞬にして失ってしまうのは、詐欺に遭う事である。手持ちの金を、リスクなしに増やす方法があるとか、虚を突いて襲ってくる。また特殊詐欺、所謂オレオレ詐欺や、昨今では税金還付とか、手を変え品を変え狙ってくる。自分は絶対引っかからないと思っている人ほど騙されるというから注意が必要である。
引用・参考元 http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/matome/15/325410/070700063/?P=1
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