<福島原発2号機>溶融燃料か、初めて映像化!取り出しは非常に至難な状況!
東京電力が福島第1原発2号機で実施していた内部調査で、溶融燃料の可能性がある黒や褐色の堆積(たいせき)物が30日、初めて映像で確認された。事故からまもなく6年が経過する中、今後の廃炉作業に向けた重要なデータが得られる可能性がある。しかし30日に公開された映像では、堆積物が格子状の足場などに広範囲にこびりついて固まっている様子がとらえられており、今後の取り出し作業の難しさを浮き彫りにした。
◇汚染水の元凶、高線量◇
「溶融燃料が映っているとすれば、人類の誰もやったことのない廃炉作業にチャレンジするうえでの大きな一歩。今後の取り出し作業の大きなヒントになるのではないか」。東電福島復興本社の石崎芳行代表は30日、福島市内での記者会見でこう述べた。
事故当時、2号機には548体分(計約164トン)の核燃料があったが、2011年3月の事故で炉心を冷やす電源を失ったために溶け落ち、一部は圧力容器を突き抜けて格納容器下部で冷えて固まったとみられる。炉心は事故当時2000度以上に達し、核燃料を含む炉内の金属が溶け出した。
溶融燃料には山側から流れ込んでくる地下水が触れて、放射性汚染水が日々発生している。廃炉のためには「汚染源」である溶融燃料を取り出す必要があるが、高い放射線に阻まれ、具体的な場所を特定できない状況が続いていた。
東電が30日に公開した2号機内部の写真は計11枚。動画も公開した。グレーチングと言われる金属製の格子状足場に堆積物がこびりついている状況のほか、水滴が天井から雨のように滴っている様子もみられた。初めて堆積物が映像で確認できたことで、事故の進展状況の解析や、廃炉作業に必要な位置関係などの情報が得られる可能性もある。
ただ、内部調査が進んでいるのは2号機だけ。水素爆発を起こし、大きく損傷した1、3号機については足踏みしている。
1号機では15年4月、格納容器の貫通口を経由して、遠隔操作ロボットを投入したものの、高い放射線に阻まれて溶融燃料を確認することはできなかった。東電は今春、別のタイプのロボットを投入する計画だが、原子炉直下にアクセスできる格納容器の貫通口付近は放射線が高く、2号機と同様の調査は困難だ。一方、3号機は格納容器にたまった汚染水が1、2号機に比べて多く、水深は約6.5メートルもある。そのため、水中を動けるロボットを開発している段階だ。放射線と汚染水が内部調査を阻んでいる。
■全体の量見えず■
東電の岡村祐一原子力・立地本部長代理は30日の記者会見で、堆積物が溶融燃料である可能性については「現時点で、その正体を(溶融燃料と)言い切ることは難しい」と明言を避けた。圧力容器の底はアルミ製の保温材などで覆われており、燃料ではなくこれらが溶け落ちた可能性も否定できないためだ。溶融燃料は非常に強い放射線を出すが、今回の調査では放射線を測定しておらず、溶融燃料と判断する「状況証拠」が乏しいことも背景にある。
専門家はどうみているのか。北海道大の奈良林直・特任教授(原子炉工学)は「塊の放射線量を測定してみなければ断定できないが、溶融燃料の可能性が高い。事故で溶け落ちた核燃料の一部が、グレーチングに引っかかって、冷やされたのではないか」と分析する。
また、公開された映像では、堆積物が広範囲に映っていることから、「溶融燃料は1カ所だけに固まっているのではなく、炉心内の機器などに張り付いているのではないか」と推測。「遠隔操作ロボットでこれらを全て回収する必要があり、廃炉作業は相当困難になることを覚悟する必要がある」と話している。
政府と東電は1~3号機の廃炉について、2041~51年の間に作業を完了することを目指している。米国のスリーマイル島原発事故(1979年)を解析した経験がある、日本原子力研究開発機構の田辺文也・元上級研究主席(原子炉安全)は「溶融燃料の可能性が高いが、今回はその一部がようやく見えたに過ぎない。取り出しのためには全体の量や形状を知る必要があり、改めて廃炉の道が遠いと感じざるを得ない」と指摘した。
記事・画像引用・参照元 Yahoo News<毎日新聞社>【柳楽未来、酒造唯、曽根田和久】
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