原因はビールにあらず…痛風で怖いのは生活習慣と体質だった!
冷えたビールがおいしい季節だが、痛風発作を警戒して控えている人もいるのではないか。夏は汗をかくため脱水状態になりやすく、尿酸値が上がりやすい。尿酸のもととなるプリン体が多く含まれるビールは、それに拍車をかける。世間でそう思われているが、この話は本当なのだろうか? 北品川藤クリニック(東京・品川)の石原藤樹院長に聞いてみた。
痛風は体の中で余った尿酸が結晶となって激しい関節炎を起こす病気だ。足の親指などが真っ赤に腫れあがり、歩けないほどの激痛が走る。「尿酸は、食べ物や飲み物に含まれるだけでなく、細胞核の部品でもあるプリン体が分解され、肝臓で生成される老廃物です。抗酸化作用があるため、体の中には常時1200ミリリットル蓄積され、1日約700ミリリットルが生成されます。それと同じ量が尿や汗、便として排出されるのですが、このバランスが壊れ、血液中の尿酸が多くなった状態を高尿酸血症と言います」
危険水域は尿酸値が「7・0㎎/デシリットル」を超えたとき。尿酸が結晶化し、尿路結石や慢性腎臓病などを引き起こすほか、心筋梗塞や脳梗塞などの発症リスクを上げる。
「確かに、ビールはお酒の中ではプリン体が一番多く含まれていて、ビール500ミリリットルに17~22ミリグラムといわれています。しかし、これはステーキやレバーなどに比べればはるかに低い。気にする量ではありません」 では、なぜ「ビールは痛風の天敵」といわれるのか? 「ビールに限らずお酒は尿酸値を上げやすい。尿酸排泄作用が低下するうえ、含まれるプリン体は体内に吸収しやすいからです。さらに、ビールには食欲増進効果があり、焼き肉やお刺し身などプリン体が多く含まれる食べ物と合う。そのためビールを飲んで食べていると結果的にプリン体を多く体の中に取り込むことになるのです」
■牛乳が効く■
しかし、プリン体が多く含まれる飲み物や食べ物を取ったからといって痛風を引き起こしやすいというのは事実なのか!?
「プリン体の7~8割は細胞核を分解する過程で生成され、食べ物によるものはせいぜい2~3割に過ぎません。体内で作られるプリン体には2つあって、細胞の新陳代謝に伴って産出されるものと、急激な無酸素運動によって作り出されるものがあります。つまり、プリン体を多く作る原因は食べ物以上に日頃の体の動かし方などにあるのです」 しかも、最近わかってきたことは尿酸を上げる主な原因は「体内から排出する力」であり、それは男女差や体質が大きく影響するということだ。
女性は女性ホルモンのおかげで腎臓から尿酸を排出する力が男性より優れているから、「痛風は圧倒的に男性に多い病気です。東大の研究グループにより、尿酸の排泄に関する遺伝子ABCG2遺伝子が変異を起こすことで、腎臓から尿酸を体外に排出しにくくなることもわかっています。また、痛風の患者さんの60%は肥満。肥満になると尿酸の排出量が減り、肥満を治すとそれが戻ることがわかっています」
つまり、ビールを飲んだからといって、尿酸を排出する力さえ整っていれば痛風の発症リスクを大きくアップさせるものではないともいえるのだ。 とはいえ、痛風はさまざまなリスク要因の積み重ねで起きるため、リスクは減らした方がいい。
「痛風が気になる人はビールを飲むときには、血中の尿酸値を下げる働きのある野菜や海藻、酢の物などのアルカリ性食品をおつまみにするといいでしょう。また、飲酒後はお酒と同量程度の水を飲んで、尿酸の排出を促すべきです。果物の果糖や清涼飲料水や缶コーヒーなどに含まれるショ糖も尿酸値を高くします。日頃からこれらを控えることも大切です」
肥満にならない様暴飲暴食に気をつけ、散歩などの有酸素運動を習慣づける事も大切だ。
「牛乳も飲んだ方がいい。牛乳にはカゼインという成分が含まれていて、胃腸で分解されるとアラニンという成分に変わり、それが腎臓から尿酸を体外に出すことを促してくれるのです」
こうしたことに気をつけておけばビールはおいしく飲めるのだ。単純にビールが悪いという話ではないのである!
記事・画像 引用・参考元 日刊ゲンダイ
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