「もう!若くはないんだぞ!」 中高年は要注意…お酒の飲み過ぎが招く思わぬ病気の数々! 年末・年始の酒を飲む機会が多くなる時期! 気を付けよう!
仕事のメドも立ち、今週末は最後の忘年会やクリスマス会という人も多いだろう。中には「祝日前だから今年最後の飲み会を楽しみにしている」というお酒好きもいるだろうが、楽しい筈のお酒が思わぬ病気を招くことがある。消化器学会専門医で「鳥居内科クリニック」(東京・成城)の鳥居明院長に聞いた。
■お酒好きの中高年がとくに気をつけたいのは膵臓の病気だ■
「膵臓は胃の後ろ側の背中の近い場所に帯状にある消化器です。腸に消化酵素を分泌して栄養分の吸収を補助する外分泌と呼ばれる働きと、血管内にインスリンやグルカゴンなどを提供して血液中の糖分を調整する内分泌の機能があります」
膵臓の病気には急性膵炎と慢性膵炎があり、その原因は胆石や自己免疫疾患などだが、一番多い原因はお酒の飲み過ぎである。
「急性膵炎は、本来は膵臓では活性化されない消化酵素が活性化され、膵臓を消化してしまう病気です。重症の場合は意識の喪失、血圧の低下、頻脈などが見られ死亡することもあります。慢性膵炎は慢性の炎症によって膵臓の固有の細胞が破壊され、線維化が起こって、膵臓の機能が低下した状態をいいます。この状態が続くと、内分泌機能の低下で糖尿病を発症したり、重症化することがあります」
急性膵炎は上腹部に激しい痛みが出て次第にその痛みが強くなり、数時間後にピークとなる。背中の痛みを伴う場合が多い。吐き気や嘔吐が起こり、食欲不振、発熱、下痢などが表れる。
一方、慢性膵炎は膵臓の線維化のほか、外分泌低下による体重減少、水面に油のように広がる脂肪便が出るのが特徴だ。飲酒中の吐血や下血も少なくない。どんな病気が考えられるのか?
「一番多いのはマロリーワイス症候群です。お酒を大量に飲んで血液中にアセトアルデヒドと呼ばれる毒性の強い代謝物が増えると脳の嘔吐中枢に信号が送られて、腹圧が高くなり嘔吐します。これが繰り返されると食道と胃の接合部の粘膜が破れて吐血することがあるのです」
食道の壁は内側から外側に向かって粘膜、粘膜下層、固有筋層、外膜の4層に分かれる。マロリーワイス症候群では食道の粘膜下層までしか裂けないが、食道壁がすべて裂けることも。それが突発性食道破裂だ。その裂け目から空気が漏れる縦隔気腫となったり、食べ物や細菌が漏れて縦隔炎が起こる場合もある。
「マロリーワイス症候群なら絶食して安静にしていれば自然と治りますが、突発性食道破裂は緊急手術が必要です。症状の違いは後者には激しい胸痛があることです」
■“プチかっけ”にも要注意■
痔持ちの人がアルコールを摂取すると血液の鬱滞が起こり悪化しやすい。これに下痢が加わるなどして痔核が破れて下血することがあるが、中高年に目立つのは大腸憩室出血だ。
「大腸憩室とは、腸の中の圧が高まって大腸の壁の一部が外に袋状に飛び出す病気です。人によっては100以上あり、便が詰まったり細菌が感染して炎症を起こして腹痛や発熱する場合が多い。お酒が刺激となってそれが破れて出血や腹膜炎を起こすことがあります」
絶食して1、2週間で軽快してそのまま治るケースもあるが、中には、数カ月後に腸管の癒着が生じて予後が悪くなるケースがある。
お酒を飲んで吐血や下血するのは他に胃潰瘍や十二指腸潰瘍、食道静脈瘤破裂や急性胃粘膜病変などがある。
さらにお酒で胃壁が荒れるなどして鉄やマグネシウムなど必要な栄養素が取れずに倦怠感や集中力を失うこともある。
「お酒で一番失われる栄養素はビタミンB1です。アルコールは、腸から吸収され、血管を通して肝臓に到着。そこで代謝され、毒性の強いアセトアルデヒドに変わります。このときにビタミンB1が必要となりますが、お酒を大量に飲んだ場合は通常以外の経路でも分解されるため、さらに多くが消費されます」
アセトアルデヒドが細胞内で二酸化炭素と水に分解され、体外に排出される際もビタミンB1は必要となる。
「ビタミンB1が不足すると疲れやすくなり、イライラして、集中力を失う。カップ麺ばかり食べているような人がお酒を飲むと“プチかっけ”症状が出ることがあるのです」
年末年始を病院や自宅で伏せて過ごすことのないよう、お酒は節度のある飲み方をすることだ。TVコマーシャルではないが、「もう!若くはないんだぞ!」
記事・画像 引用・参考元 日刊ゲンダイ <self care>
画像元 yjimage
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