気を付けよう!中高年男性に忍び寄るコワーい!足の病気!下肢静脈瘤!

健康

気を付けよう!中高年男性に忍び寄るコワーい!足の病気!下肢静脈瘤!

 

日々の仕事で長時間、立ちっぱなし、座りっぱなしという人は多いのではないだろうか? そのような人に発症しやすい疾患がある。足の血管がぼこぼこと浮き上がり、むくみや痛みを伴うこともある「 下肢静脈瘤 かしじょうみゃくりゅう 」という疾患だ。女性に多いと言われるが、実は患者の約4割を男性が占める。いったん発症すると自然に治ることはないため、長く付き合わなくてはいけない厄介な病気だ。「下肢静脈瘤」発症のメカニズムと上手な対策法について、北青山Dクリニックの阿保義久医師に解説して戴く。

 

日々の仕事などで長時間、立ちっぱなしや座りっぱなしで過ごしていませんか? 例えば教壇や厨房での立ち仕事、パソコンの前に張り付いてのデスクワークなど。そのような人に注意してほしい疾患があります。足の血管がぼこぼこと浮き上がって、むくんだり、だるくなったり、時には、足がつったり、痛みを生じたりする「下肢静脈瘤」というものです。

 

この疾患は、女性に多いと言われていますが、実は中高年の男性にも多くみられます。男性の割合は全体の4割ほど(北青山Dクリニックの集計)に上ります。日本人の10人に1人が発症するという研究報告もあります。また、梅雨の時期に患者数が多いという傾向も見られるといわれる。

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<執筆者提供>

大切な足に苦痛が起こると、仕事がはかどらず、日常生活の質が損なわれることはもちろん、重症化して湿疹や潰瘍、血栓などが生じると治療をしても回復には時間がかかる。正しい知識と対策法を理解しておくことが大切。

 

【足の血管がぼこぼこに】

 

下肢静脈瘤とはどんな疾患なのか? 足は骨や筋肉などからなり、血管(動脈と静脈)が走っています。足の血管のうち、静脈には、筋肉の間などにある太い血管(深部静脈)と皮膚の表面付近にある比較的細い血管(表在静脈)などがあります。

 

下肢静脈瘤は、皮膚の表面を走る静脈に、深部静脈から血液が逆流してくることで発生します。大雨で大河から支流へ逆流してくるようなイメージです。実際に発症すると、血管が膨らみ、ぼこぼこと浮き上がってきて、文字通り「瘤こぶ」のようになる。

 

【あなたは大丈夫? こんな人は発症しやすい】

 

下肢静脈瘤は女性の方が多く発症すると言われていますが、男性も患者が増えている。特に中高年の男性の方は要注意。しかも中高年の男性は、発症しても放置するためか、重症化してから受診する場合が多いのも問題だ!

 

下肢静脈瘤の発症には、主に三つの要因がある。

(1)「重力の影響」…教師・調理師など長時間の立ち仕事をする人

(2)「筋力の低下」…デスクワーク中心で座りっぱなしの人、運動不足の人、高齢者

(3)「血管が膨らみやすい」…遺伝的に血管が壊れやすく、血栓ができやすい人

 

【弁が壊れて血液が逆流!】

 

本来、心臓から体の隅々へ送られる血液は、老廃物を回収するなどして静脈を通り、心臓へと戻ります。その静脈には、血液が逆流することなく心臓へ向かえるよう「逆流を防止する弁(静脈弁)」がある。心臓に比べて下位にある足の血液が、重力に反しながらも逆流せずに心臓へ到達できるのは、この「逆流防止弁」の役割が大きいのです。

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<出筆者提供>

この「逆流防止弁」ですが、“大河の支流”(足の皮膚表面を走る静脈)と“大河”(深部静脈)の合流地点にある弁は、深部静脈の強い圧力がかかるため壊れやすいという事情があります。もしこの合流部の弁が壊れると、深部静脈を流れている大量の血液が、皮膚表面の静脈へ一気に逆流してしまいます。血液が押し寄せてきた血管は大きく膨らみ、瘤のようになるのです。これが、下肢静脈瘤ができるメカニズムです。

 

【自然に治癒しない、そして徐々に悪化】

 

下肢静脈瘤の症状としては、足の血管がぼこぼこと浮き上がってくるほかに、足がむくむ、だるい、重い、疲れやすい、火照る、痛いなどがあります。ひどくなると湿疹やかゆみ、皮膚炎、潰瘍などを発症することもある。

 

これらは、いったん発症すると自然に治癒することはありません。そして徐々に悪化していくので、実は怖い病気である。したがって、適切なタイミングで適切な治療をする必要があるのです。

 

【突然死を引き起こすエコノミークラス症候群】

 

ここで、下肢にまつわる最も危険な疾患の一つをご紹介。それは、「エコノミークラス症候群(肺塞栓症)」です。

 

これは長時間の座りっぱなし、さらには水分不足、不眠などのストレスによって血液が固まりやすいときなどに起こる。足の深部静脈に血栓が生じ(深部静脈血栓症)、この血栓が何かの拍子に心臓の方へ向かって流れ出し、肺につながる血管(肺動脈)を詰まらせる(肺塞栓症)、肺が壊死する(肺梗塞)、肺と心臓の機能が停止する(心肺停止)、そして命を落とすことにつながるという恐ろしいものです。

 

災害非難で車中泊を続けている人や、避難所で水分の補給を控えながら生活を続けている方々には、注意する必要がある。

 

【体を動かさない生活習慣が…】

 

下肢静脈瘤がエコノミークラス症候群を引き起こすというわけではありません。ただし、立ちっぱなしや座りっぱなしなど、体を動かすことの少ない生活を送っている人は、このような血流に起因する疾患を発症しやすいので注意が必要。

 

【重要なのはポンプの機能】

 

どのような対策を講じたらよいのでしょうか?

私たちの体では、心臓を中心に血液が全身を循環しています。血液が心臓から全身に流れていく際は、心臓がポンプとなります。ところが、全身から戻ってくる際は簡単にはいきません。 足の血液を足よりも高いところにある心臓へ運ぶためには強力なポンプが必要です。それを担うのが、「横隔膜」や「肋間筋ろっかんきん」などの「呼吸筋」、そして「腹筋」と「ふくらはぎの筋肉」などになります。特に「ふくらはぎの筋肉」の役割は重要で、「第二の心臓」とも呼ばれています。

 

血液が滞留しないようにするためには、ポンプを鍛えることが大切です。まずは、「ふくらはぎの筋肉」、それから「呼吸筋」をしっかりと動かす習慣を身に付ける。ここでは二つの習慣づけを提案したい。①毎日20分ほど「少し早めに歩くこと」、②朝と晩、「最低5回、大きく深呼吸をすること」です。これらを毎日継続して、ポンプに磨きをかけてほしいと思います。

 

さらに、血液が固まりやすい状況を作らないため、「水分を充分に摂取する」「血管の炎症を防ぐ(風邪をひかない、煙草を吸わない)」ことも大切。弾力性のあるストッキングなどで足を圧迫することも血栓症や静脈瘤発症の予防になります。

 

私たちの体の中で、足は生活する際に最も大切な部位の一つです。ぜひ、日頃の生活習慣の中で上手な対策を施していただきたいと思います。

 

引用・参考元 読売新聞<

2016年07月01日 09時15分>

http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20160628-OYT8T50008.html?page_no=1

医師、北青山Dクリニック院長 阿保義久阿保義久 (あぼ・よしひさ)氏

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