混迷の東アジア情勢に「2人の晋三(総理・総裁の使い分け)」のままでいいのか?!

この国の行方

混迷の東アジア情勢に「2人の晋三(総理・総裁の使い分け)」のままでいいのか?!

 

 

こと改憲論議に関しては、安倍晋三が2人いるようだ。憲法記念日にいきなり飛び出した「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」との自身の発言について、安倍首相は国会で「“自民党総裁”としての考え」と言い繕っている。

 

考えの発表の場は当日の読売新聞朝刊と、日本会議主催の改憲集会だ。自民党内で党員に向かって話したわけではない。一般の読者に自分の考えを広く知って欲しいから、読売のインタビューに応じたのだろう。

 

憲法記念日の改憲宣言は明らかに一般国民向けのメッセージだ。多くの国民は、彼が内閣総理大臣だと認識している。国民は当然、総理としての発言だと受け止める。百歩譲って選挙直前や選挙期間中なら、いざ知らず、この時期に党総裁としての考えを一般国民向けに表明するなんて、あり得ない。

 

それなのに“自民党総裁”としての立場を強調するのは、ご都合主義の極みだ。自分の存在を、自分のいいように使い分けているだけ。裏を返せば総理大臣の立場での改憲宣言が、いかに都合の悪いことかを熟知している証拠でもある。

まず、現行憲法が定める大臣や公務員の憲法擁護義務に反する。行政府の長が「20年の施行を目指す」と期限を設けて国会に改憲論議を迫るのは、立法府へのロコツな介入だ。権力の乱用を防ぐ三権分立の原則からも大きく外れる。

 

そして国民主権をうたう憲法を、いつまでに、こう変えると総理大臣が独断で決めてしまうのは、民主主義や立憲主義の趣旨からも逸脱する。

 

党総裁としての改憲宣言は国民をおちょくる確信犯だ。安倍首相は自分の立場を弁えて発言すべきだし、それができないのなら、総理の座を降りるべきだ。

 

改憲論議では言ってはいけないレベルまで踏み込みながら、森友学園問題になると、安倍首相はダンマリを決め込む。この点でも「二重人格」を疑いたくなる程だ。野党議員に黒塗りだらけの内部資料しか渡さない財務省に、首相の権限で「黒塗りを外せ」とは、ひと言も指示しない。そこまでして内部資料に記された“安倍記念小”の文字を隠したいのか。

 

もはや安倍首相でなければ誰でもいい。誰がやっても安倍首相よりは、ずっとマシなはずだが、自民党内は人材払底だ。他に「この人こそは」と思える政治家がいないという消極的な理由から、今なお安倍政権の支持率は50%を上回っていられるのだ。

 

■1強イコール人材難■

 

この国の政権政党が「安倍1強」という名の人材難に喘いでいるうち、世界は混沌としてきた。東アジアだけでも北朝鮮情勢は緊迫状態が続き、中国はヨーロッパまでを陸と海で結ぶ「一帯一路」なる巨大経済圏の実現に邁進している。

 

果たして混迷の時代に、人材が枯渇した政権政党に、この国の舵取りを任せていいのか。心持ちは、不安と不満でモヤモヤするばかりだ。

 

高橋乗宣(エコノミスト)profile

1940年広島生まれ。崇徳学園高から東京教育大(現・筑波大)に進学。1970年、同大大学院博士課程を修了。大学講師を経て、73年に三菱総合研究所に入社。主席研究員、参与、研究理事など景気予測チームの主査を長く務める。バブル崩壊後の長期デフレを的確に言い当てるなど、景気予測の実績は多数。三菱総研顧問となった2000年より明海大学大学院教授。01年から崇徳学園理事長。05年から10年まで相愛大学学長を務めた。

 

 

記事・(画像) 引用・参考元 日刊ゲンダイ <日本経済一歩先の真相>

混迷の東アジア情勢に「2人の晋三」のままでいいのか|日本経済一歩先の真相
こと改憲論議に関しては、安倍晋三が2人いるようだ。憲法記念日にいきなり飛び出した「2020年を新しい憲法が施行さ...

画像 共同通信

 

 

 

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