朝になると、鶏は時を告げますし、夕方になれば、鳥は巣に戻ってきます。季節的にみれば、冬になると渡り鳥が北方から来て、春になると帰っていきます。このように生物は自然の中で、ある一定の繰り返し、即ち「生体リズム」を持って生きています。ヒトはどうでしょうか?
ヒトも生物ですから、「生体リズム」があるのです。夜何時ごろ寝て、朝何時ころ起きるか?食事はどうか?仕事をする時間、何時に寝ているか?などなどの行為を1日の中で繰り返しています。これを「生活習慣」といいます。このように、ヒトには、明らかに繰り返す「リズム活動」と、一見して繰り返さないように見える活動とがあります。
「時間生物学」という新しい学問は、こうした生物の活動の繰り返し、即ち生活習慣を捉え、時間と共に変化する「命の現象」を科学的に明らかにしてきました。この結果、時間的にみて、繰り返される現象、即ち「生体リズム」があることが解明されました。(千葉嘉彦著「からだの中の夜と昼」中公新書 参考されたし)最近、下等動物では、24時間という、1日1日の繰り返しを決定する遺伝子(時計遺伝子という)が、細胞の中に組み込まれていることが解明されました。更に驚くことに、ヒトでも、眠りや、目覚めなど、1日の生体リズム刻む、「体内時計」を司る遺伝子、つまり時計遺伝子が存在することが、東京大学医科学研究所で発表されました。また哺乳動物では、脳の中に、24時間の繰り返しを決定する「生体の時計」の中枢(元になる時計=親時計)があることも解明されました。この親時計が、環境の影響を判断して、最終的な生体の時計として機能しているのである。即ちすべての生物が、繰り返し起こす現象は、単に現象としてではなく、生命活動の繰り返しであることが解ってきました。この時間生物学は、1960年代から広く世界中で研究され、医学分野でも大きな成果を上げるようになってきました。つまり時間と共に、一定の繰り返しをする「からだ」即ち「生体リズム」によって、変化していく、「からだのしくみ」を明らかにし、病気の診断や、治療、予防を行おうという、新しい医学である「時間医学」が発展してきたのです。「時間」とか、「からだ」「こころ」の変化を知ることが、健康を回復させる上で無視できなくなってきたのです。
以上「時間医学がつくる自然治癒力」田村康二著 泉書房 サブタイトル こころとからだの「生体リズム」調律法 参照。
現在社会は、高度に複雑化し、昼夜の区別なく活動をしています。CVSは24時間営業していますし、夜も営業しているということは、夜間に起きている=仕事をしている人が多く、CVSも充分採算が取れるということです。長距離運転手は、交通量の少ない夜間走行しています。都内では、バスや電車も24時間営業する方向にあります。このように一昔前と違って、24時間社会は活動するようになっています。このような環境下では、睡眠時間は夜とるものだという常識が通用しない時代になったということです。即ち「生体時計」が根底から無視する生活習慣をしている人が増えてきているということになります。生体は、交感神経と、副交感神経が、交互に優位になったり、劣勢になったりして、生体活動をコントロールしています。起きて活動しているときは、交感神経優位=支配のモードにあり、また寝ているときは、逆に副交感神経支配のモードに切り替わります。
その寝ている間に、1日活動して、疲労した体を、ホルモンなどの分泌によって癒し、翌日の活動に備えます。しかし夜更かししたり、徹夜したり、睡眠時間が充分取れない生活を繰り返していると、この生体修復機能が破綻して、病気の発症に繋がります。ある運送会社の従業員は、夜間長距離の運転(=ストレス)を繰り返している為、まだ30代の従業員が多いのですが、半分以上の運転手が糖尿病になっています。本来なら睡眠をとって、生体活動の修復する時間帯に、運転しているの(しかも繰り返し)ですから、自殺行為そのものです。当然夜間食事したりするので、体の負担もより掛かります。(生体リズムから言って深夜の食事はあり得ません)こうして生活習慣は、生体リズムとは全く逆転したリズムで営われるので、体の変調が起きない訳がないのです。
生活習慣病という言い方をしますが、現在この生活習慣が乱れに乱れ、糖尿病ばかりか、いろいろな病気が誘発されているのです。生活習慣を、本来生体が内包している「生体リズム」に沿った生活を心掛ける必要がありそうだ!
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